漢検尾根への飽くなき挑戦

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奥多摩じゃない山など

不合格4回。絶望からの再挑戦

2024年2月11日(日)、日本漢字能力検定を受けました。準1級です。5回目の受検です。恥ずかしながらこれまで合格したことはありません。200点満点で160点以上がおおよその合格ラインとされていますが、これまでの得点推移は147点、144点、157点、154点。3回目なんて「もう合格でいいでしょ。ねっ、ねっ」と訴えたいところですが世間は非情です。
検定は1年度に3回あります。ずっと連続して受検したわけではなく、1回目から4回目は3年間ほど、4回目と今回の5回目は連続して受検しました。「もう我慢ならん。決着をつける」という心情での連続受検です。

そもそも漢検って何よ

日本漢字能力検定、通称「漢検」は公益財団法人日本漢字能力検定協会が実施しています。同協会の理念は「社会生活に必要な日本語・漢字の能力を高め、広く日本語・漢字に対する尊重の念と認識を高めるための普及啓発・支援活動、調査・研究、日本語能力育成活動を本邦及び海外において行い、我が国における生涯学習の振興を通じて日本文化の発展に寄与する。」(同協会のホームページより)とあり、漢検はこの理念実現の一環なのでしょう。
漢検は1級、準一級、2級、準2級、3級、4級、5級、6級、7級、8級、9級、10級の12段階が設定されています。10級は小学校第1学年で習う漢字を読み書きできること、1級は約6000字の漢字の読み書きができることが目安。協会のホームページで公開されている1級の過去問題を見てみたんですが130問中5問ほどしかわかりませんでした。うーん、これを80%以上解答できるというのはちょっとフツーじゃないような気がします。
合格率は年度や回によってバラつきがあるものの、10級で90数%なのがだんだんギューッと絞られていって3級で50%ほど、準1級は10数%、1級にいたっては10%に届かない難関です。

恥ずかしい吐露をちょっとだけ

10数%の合格率に挑み、毎回「ふふふ、受かったな」と思っていたんですが、Webの合否発表を見るたびに撃沈してきました。とくに3回目と4回目は「ぶはははは!楽勝!今度こそ 合格!」とほくそ笑んでいたんですが不合格。その落胆と屈辱感たるやめざす尾根を撤退するとき(最近だとタル沢右岸尾根)の比ではなく、稲村岩より大きなものでした。不合格になるたびに「漢字を読んで書ける尾根歩きスト(Onearukist)」への野望はずんずん遠ざかるのでした。
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日本漢字能力検定準1級尾根(漢検尾根)へのアプローチ

今回の受検会場は東京都新宿区の桜美林大学新宿キャンパス。JRの大久保駅や新大久保駅が最寄駅です。受検時間は15時30分から16時30分なので下山即酒にほどいいタイミングです。ココロ当たりは何店かあります。店に入らなくても「まいばすけっと」で缶ビールを買って足を伸ばして箱根山(山手線内の最高峰)のてっぺんで飲むのもいいな、などと思いながら歩いている自分に気づいて緊張感のなさに自嘲の藪に頭を突っ込んでしまいます。
会場に近づくにしたがって人が増えてきました。準1級と同時間帯に3級と5級の検定も行われるので父母に連れられた小学生や中学生がどーっと集まってきました。三頭山の西峰に向かうハイカーそっくりです。いや、三頭山でなくてもいいんですが八丁山にどーっと集まることはないはずです。いや、八丁山でなくてもいいんですが。麟子鳳雛、多士済々のなかで鶏皮鶴髪の我が身はそこそこ目立ちます。已己巳己の同輩もちらほらと見かけますが、なんだかみなさん物静かなインテリに見えてしかたがありません。ん、すでに合格しているのに漢字力維持のための何度目かの受検かもしれません。そーなると同輩どころではありません。電車やバスの中でこれでもかという大音量で熊鈴を鳴らしまくる輩と同じです。

取付き前の静けさ

いい感じで戦闘モードに入ったんですが、桜美林大学はおしゃれな校舎で戦闘モードを削がれてしまいました。幅広い階段の半分くらいがベンチになっていてパステルカラーの座布団(?)がぽんぽんぽんと置かれていたりしています。3階まで上がり、教室に入ったんですが道中はとにかく明るい雰囲気です。
教室に入ると参考書類の閲覧禁止、携帯電話やスマートフォンの電源を切る、飲食禁止、などなどのキビシー掟があります。参考書類も食べるものも飲むものも持ってきていないのですぐに教室に入ったんですが、これがちょっと失敗。受検票、シャープペンシル、消しゴム、老眼鏡を机の上に出すとすることがなくなってしまいました。おしゃれな校舎をぶらぶらすればよかったです。
最初から問題用紙が机に配られています。ヒマにあかしていくら睨んでも問題を透かし見ることはできません。曇天にハナド岩から雲取山を見ようとするみたいなものです。

難なく取付へ

10分ほどの検定に関する注意事項がアナウンスされて検定開始です。カサカサカサ、カチャ、クチョ、ゴギー、いろんな音が聞こえてきます。
取付は「音読み」が20問。すんなりと取付けたんですが「訓読み」の10問に踏み入るとちょっと勾配がキツくなってきました。微妙な分岐があったんですがどーせ上で合流するからとエイヤッと選んだ小尾根登り、続く「表外の読み」の10問でまたどっちともいえない分岐が現れてここもエイヤッと薄ーい踏み跡をチョイス。どちらの選択も失敗でした。「熟語の読み(音読み)」と「その語彙にふさわしい訓読み」は藪に覆われたそこそこの急登でした。なんとか藪を抜けたんですが2、3か所で引っかき傷を負った自覚があります。ここまでは読みの問題です。1問1点で合計30点が配点されています。
問題用紙にこれといった区切りはなく、多くの標高点のようにとくになにがあるわけではないんですが、ここから書きの問題になります。
書きの最初の問題は「共通する常用漢字(一字)」をひらがなの選択肢から選んで書くというもの。準1級の問題のなかで難問とされています。たくさん引用すると怒られるのでちょっとだけ引用します。「(2)所を外してしくじった。父親の(2)気を被った。」「句作を(5)閑の具とする。党の(5)長がかかっている。」。この(2)や(5)に当てはまる常用漢字を「かん・きゅう・し・しょう・にん・ふく・ゆう・そう」から選ぶという問題です。5問あります。取りかかってすぐは檜尾根山ノ神尾根の岩崖を前にしたような絶望感が広がったんですが、じっくり岩肌を眺めていればなんとなくルートが見えてきました。小怒田ノ尾根の岩稜くらいには感じられるようになり、ゴニョゴニョと廊下状の岩棚を伝い、岩の割れ目を這い上がり、なんとか漢検尾根に復帰しました。
次はカタカナを漢字で書くという、オーソドックスな書き取り問題が20問です。キツい岩崖を越えたばかりなんですが息を抜けません。「オイゴ様」「ケシ粒」「オモカジを切って」など、書けるよーな書けないよーな、ニクイところを突いてきます。「リンカに遭う」「リンカが冷たく燃える」なんていう同音異字も出題されました。
これで前半の大問の5問が終わりです。タワ尾根でいえば篶坂ノ丸よりちょっと上あたりかな。
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いよいよ漢検尾根のデンジャラスゾーンへ

後半は誤漢字直しの5問から始まって空欄2文字を埋めて四字熟語を完成させる問題が10問、解説・意味にあてはまる四字熟語を選択肢から選んで読みを書く問題が5問が続きます。
準1級は四字熟語の習得がポイントといわれます。誰が言っているかはよくわりませんが、準一級の上方をネットで調べているとよく見かけるフレーズです。200点中30点の割当なので確かにその比重は小さくありません。例えばひとつの熟語を覚えたらその構成漢字の音訓読みはそこそこ容易に知ることができます。熟語からはいろんな読み書きに派生することが可能ですが、一方、四字熟語は横のつながりがごく少なく、人名や地名なんかが含まれている四字熟語もそこそこ多く、四字熟語は四字熟語で覚える必要があります。わかったよーな、わからないよーな、まっ、そんな漢字? 感じ? です。
四字熟語ゾーンを通過すると「対義語と類義語」。ひらがなの選択肢から熟語の対義語と類義語を選んで熟語で書く問題が5問ずつです。「対義語と類義語」を学習する、なんてことはおそらく非効率です。とゆーか、どー学習すればいいのかわかりません。目についた熟語の対義語と類義語を一つひとつ調べるのでしょうか。この問題の対策は熟語をとにかく拾い集めることしかないんじゃないでしょうか。拾い集めた持ち札と選択肢のひらがなを擦り合わせ、納得のいく札を答える、というルート取りがいいように思います。配点は20点。
続いては故事・成語・諺のカタカナ部分を漢字にする10問です。「グコウ山を移す」「天上のゴスイ人間の一炊」はそれぞれ「愚鴻」「午睡」と答えて滑落。なんとか這い上がったものの20点中マイナス4点が確定で「漢字を読んで書ける尾根歩きスト(Onearukist)」への野望にやや陰りが見えてきました。
最終問題は文章中のカタカナを漢字にするのが5問(配点は10点)、漢字の読みが10問(10点)です。配点は漢字が今回は夏目漱石の『坊っちゃん』と坪内逍遥の『小説神髄』から出題されました。どちらもそこそこ馴染みがある作品ではあるけれど文章を覚えているわけはなく、ましてやどんな漢字が使われていたかなんて記憶のずーーーっと外のその圏外です。けれども尾根のてっぺんはすぐそこのはず。気合を入れ直したんですが意外や意外、ひーこらと登ってきた稲村岩尾根の鷹ノ巣山山頂直下みたいにタラーンとしてちょっと拍子抜け。減点は2点。だと思う。のはず。であって欲しい。

漢検終了。下山即酒、夕暮れのなかを居酒屋に向かう予定でしたが、予想に反して大久保の空はまだ明るいです。どーしようかな。

答え合わせは意味なしの話

2月16日にWeb上で標準解答が公開されました。これまではざっと答えを書いた問題用紙(持ち帰っていい)や記憶と標準解答で答え合わせをして合格を確信したり、ここはこー書いたはずだから合格だな、うまくいけば合格、などと牽強付会、自分に大甘な自己採点はまったく意味がないことをわかっているのでざっと見るだけで点数計算はしていません。「ふふふ、合格だな」と思っているんですが、またまたまたまたになると恥ずかしい限りなので3月8日の合否発表まで大口は叩かないようにします。
これにて日本漢字能力検定準一級尾根はおしまいです。が、ちゃんとてっぺんまで歩けたのかはまだ不明です。
ところでこの記事はなにかの役に立つのでしょうか。せめてどなたかの消閑の具になればと祈るばかりです。もし合格したら学習方法の勘所をエラソーに書きたいと思います。5回の受検を経験したからこその有益な情報がザクザクある、わけないか。
お読みいただきありがとうございます。
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