64歳「青春18きっぷ」地獄の高知行き【前編】

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64歳「青春18きっぷ」地獄の高知行き 奥多摩じゃない山など

時差ボケはイヤだ

今年(2023)は8月までに東京・高知を3度行き来しています。無人の実家のメンテナンスやリフォームを地元業者さんに依頼したり作業結果を確認するための高知行きなんですが、そのたびに航空機とホテルがいっしょになった個人参加のツアーを利用してきました。安くてネットで予約から決済までできるので便利なんですが、時差ボケが悩みのタネでした。東京・高知ぐらい離れていると時差ボケも無視できません。着いた当日は体がだるく、次の日も軽い二日酔いみたいでなんだかスッキリしません。

というわけで、今回は陸路で高知に行くことにしました。大学生時代は夜行列車でボストンバッグを枕に何度か帰省したんですが、もうそんな列車はありません。あの「新幹線はお金がもったいない。シンドいんだけれどもまっしょーがないか。両親が待っているから帰ってやるか。学割も余っているし」という感情は、淡いノスタルジアの裏返しだったことはいまではもうはっきりわかります。そしてふと、学生時代のようにゆっくりゆっくり帰省してみようという気になりました。

真っ昼間の前々々々夜祭

高知行きを壮行する前々々々夜祭が行われました。真っ昼間ですが。 送る人と送られる人が同じで総勢ひとりという、ミニマリストが聞いたら泣いて喜ぶ会でした。東京都・吉祥寺の「いせや公園店」にて。

「青春18きっぷ」は9枚? と思ったら違った

そこでいろいろ調べてみると、やはり大昔のような夜行列車はなく、新幹線に乗るのが現実的か、と思っていたところ「青春18きっぷ」が目に止まりました。名前は聞いたことがあるんですが、使ったことはありません。新幹線や特急料金、急行料金なんかがいらない列車なら日付が変わった次の停車駅までひたすら乗っていけるというJR限定(一部例外あり)の切符です。そんなおトクなのか無謀なのかよくわからない乗車が5回できて1万2050円。なんだか夜行列車での帰省にとても近しいものを感じて「青春18きっぷ」を利用することにしました。
「青春18きっぷ」は自動券売機で購入。クレジットカードで決済したんですが、券売機から紙片が出るわ出るわ。全部で9枚も吐き出されてきました。
「クレジットカードご利用票」、「領収書」各1枚のほか、きっぷの使い方を記載した「ご案内」4枚、「青春18きっぷアンケート」1枚、「アンケート記入方法」1枚、そして本丸の「青春18きっぷ」1枚のしめて9枚。よかったです。旅行に必要なのは1枚だけで。9枚も持ち歩いていたら1、2枚はなくすに決まっています。
それにしてもこのアンケートはなんなんでしょう。記入して駅員に渡せということなんですが、経由路線の書き方がめんどーだし、アンケート結果を何に利用するのかも不明だし、抽選でなにかがもらえるわけでもなさそうだし、お願いするという姿勢がめっちゃ希薄なのに笑ってしまいました。こんなの提出する人いるんでしょうか。「青春18きっぷ」の利用者はMなの?
青春18きっぷ

自動券売機から紙片が9枚も出てきた。

青春18きっぷ

これが「青春18きっぷ」。乗る回(日)ごとにこの切符に駅名と日付が入ったハンコが押されて5つでおしまい。5人グループで1回で使い切る、なんてこともできる。

などと出発前からモヤッとした感情を抱いていては旅は面白くありません。
 

東京駅をトホホな出発

東京駅

5時40分発のJR東海道本線沼津行きに乗車。熱海で乗り換えるまで2時間、ちょうど最寄り駅から軍畑までの乗車時間です。

いつも奥多摩に行くのよりちょと遅めに自宅を出て最寄り駅から奥多摩と反対方向の電車に乗ります。「この踏み跡、違ってんじゃないの?」みたいな軽い疑心暗鬼、不思議な気分です。
東京駅5時40分発のJR東海道本線沼津行に乗り込んだのはいいけれど、いきなり痛恨のミス。缶ビールを買えませんでした。時刻が早すぎて駅内のどこの店舗も開いておらず、缶ビールどころかおにぎりの1個も入手できず。電車が走り出してすぐに出発の儀を執り行うことを目論んでいたんですがトホホです。
傷心が電車の揺れにもてあそばれます。2時間後に熱海駅に着きました。乗換え時間が20分ほどあります。改札口で「青春18きっぷ」を駅係員にビシッと見せ、小走りで駅の外に出て周囲を見渡します。真正面にコンビニがありました。ようやく缶ビールをゲット。うれしさというか安堵のあまり固形物を買うのを忘れてしまいました。なんて書くとほとんどアル中ですが、アル中が1滴もアルコールを飲まず谷水を飲みながらそこそこキツい尾根歩きなんかするでしょうか。浮石、朽木だらけの崖を這い上がるでしょうか。答えは明らかですよね。よね。
再び「青春18きっぷ」を駅係員にビシッと見せて入場し、JR東海道本線静岡行きの列車に乗り込みました。
乗客は東京駅を出たときはまばらだったんですが、駅に停まるたびに少し降りてたくさん乗るという状況が熱海まで続きました。人の移動はコミュニケーションのひとつの形だと思います。コミュニケーションは減るより増えるほうがいい、と思います。
駅から海が見えたりすると旅情はいやが上にも盛り上がります。ちょっと前に右の車窓から大きな富士山が見えたんですが、富士山は奥多摩からも見えるし、正直なところ車窓からの富士山はわたくしのココロの琴線に触れることなく、見えたり見えなくなったりしながら遠くに行ってしまいました。
国府津駅

プラットホームの向こうに太平洋が見えました。旅情をかきたてられます。国府津(こうづ)駅。

根府川駅

旅情いよいよ爆上がりです。根府川(ねぶかわ)駅。

 
静岡行きの電車は熱海までの乗客の多くを引き継ぎ、新しい乗客も参入してなかなかの混み具合でした。衆人環視の出発の儀はごく控えめなものにならざるを得ませんでした。小さくちっちゃくひっそりと「乾杯! 頑張るぞー、オーッ」って、ただ電車に乗って身を任せるだけなんですけどね。
静岡駅

熱海駅で静岡行きに乗り換え。帰宅後にこの写真を見て気付いたんですが、あちらのホームに「NewDays」が見えます。時間を気にしてわざわざ駅を出なくてもよかったみたい。

海が見えなくなると窓の風景は飽きるかとゆーと、まーちょっと飽きます。林道小川谷線を下ってきて小川谷橋から東日原バス停まで歩くくらい、ヨコスズ尾根の登山道の下3分の1を歩くくらいには飽きて、窓から乗客に目を移すと反対側のボックス席に座っていた2人組のおっさんが盛大に缶ビールをぶちまけて、ぶちまかした本人じゃない相方が文句ひとつ言わずに白いタオルや青いタオルを使ってせっせせっせと濡れた床を拭いていました。その拭き方がめちゃくちゃ手際よくかつ丁寧で、床はぶちまかされる前より明らかにピカピカできれいになっていました。ぶちかました本人はそーとー酔っ払っている様子です。ほとんど閉じた目で下を向いて「もーいい、もーいいよ」などとつぶやいています。この2人の関係はいつもこーなんだろうな、となんだかしみじみ深く感じ入ったりしたのでした。
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瀬戸は日暮れて夕波小波、だったかどうかはわからない

飽きるとは言っても窓の風景はときどき「へーっ」とか「ふーん」とか感じる景色を見ることもあります。ジグソーパズルをはめたように山腹に並んでいる家々や金属工業の企業が大中小みっちりと軒を連ねていたり「こんなにいっぱい並んでいて商売は大丈夫?」と心配になるくらいに大人の宿泊施設が妖しげな列をなしていたり、そーゆーものを眺めていると生きるうえで足しになるのかならないのかはともかく、脳のどこかで神経伝達物質がヒュヒュッと移動しているに違いなく、旅の醍醐味です。
ここまで(これからも)ろくな写真がないんですが、スマホでの撮影が不慣れだということが大きな原因です。さらに「青春18きっぷ」の「鈍行」(「各駅停車」が正式名称らしい。けれどもわたくしは生まれてこの方9.7対0.3で「鈍行」と言っています)に揺られていると窓や乗ってくる客や降りる客をボーッと見ているだけで何もする気が起きません。
けれども鉄オタらしき人たちは精力的に動き回ってあちらこちらにカメラやスマホを向け、彼らなりの旅を満喫しているようでした。せめての抗いに「ふふふ、君たち、こー見えてもわたくしは青春18きっぷを持っているんだよ」と切符を団扇のようにあおぎながら見せびらかそうかな、とちょっと思ったけどやめときました。
岡山からJR快速マリンライナー55号・高松行に乗車。いよいよ本州から四国へ、瀬戸内海を渡ります。列車は瀬戸大橋をガシャーガシャーガシャガシャガシャーガシャーガシャガシャと駆けます。瀬戸大橋には鉄道と道路が通り、鉄道と道路を併用する橋としては世界最長らしい。本州と四国を結ぶ橋は瀬戸大橋(瀬戸中央自動車道)のほか、神戸淡路鳴門自動車道と西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)の3つあります。

上は瀬戸内海を渡り中の動画です。瀬戸中央自動車道が通る瀬戸大橋には6本の橋があるそうですが、上の動画はいったいどこでしょう。瀬戸は日暮れすぎて夕波小波だったかどうかもわかりません。若くもないしお嫁にもいかないし、まっ、いいか。
四国に渡ると日はとっぷり暮れ、坂出駅でJR快速サンポート南風リレー号・琴平行に乗り換え。本日の目的駅である宇多津(うたづ)駅で降りました。
宇多津駅

本日の目的駅、宇多津駅に着きました。約14時間の長旅でした。駅名に照明を当てないのはなにか理由があるのでしょうか。

快活クラブ丸亀店

駅から20分ほど歩いてきょうの投宿先「快活クラブ丸亀店」です。ちょっと先に「餃子の王将」の看板が見えたのでまずはそちら向かいます。

「餃子の王将」で中華そばと唐揚げを注文しました。そー言えば東京を出て帰るまでで外食したのは2回だけでした(もう1回も「餃子の王将」)。あとの食事はすべてコンビニやスーパーなんかで弁当や惣菜を買って電車や宿泊先の部屋で食べました。暑いということもあったんですが、なんだか外食する気分になれませんでした。
餃子の王将

中華そばと唐揚げを注文して本日の一人打ち上げです。アルコール類はなぜか飲む気になれませんでした。

「快活クラブ」に泊まるのは初めて。アプリから会員登録する(と入会費が無料)のにすったもんだするもなんとか入会して「完全鍵付き個室(フラット)」に入室。なんにもすることがないので備え付けのパソコンで『THE STAY』というB級映画といったら世のB級映画がかわいそうな映画(個人の感想です)を観ていたら寝落ち。ふと目覚めて「もったいない」と思って覚えているところまで早送りして最後まで観たんですがもっともったいなかったです(個人の感想です)。
そんなこんなで夜は更けていくのでした。んっ? どこが地獄なの? 各駅停車に乗ってボーッとしてとくどきうつらうつらしてビール飲んでるだけじゃないの? というご意見はごもっともです。
天井を見ながら「ちょっと腰が痛いなぁ」などと地獄っぽいことをつぶやいているとさらに夜は更けていくのでした。
[本日の移動 東京→宇多津]
東京05:40発 JR東海道本線・沼津行
熱海07:40着 08:02発 JR東海道本線・静岡行
静岡09:20着 09:21発 JR東海道本線・浜松行
掛川10:06着 10:17発 JR東海道本線・豊橋行
豊橋11:19着 11:32発 JR東海道本線快速・大垣行
大垣13:02着 13:12発 JR東海道本線・米原行
米原13:47着 13:50発 JR琵琶湖線新快速・姫路行
姫路16:18着 16:35発 JR山陽本線・播州赤穂行
相生16:54着 16:59発 JR山陽本線・糸崎行
岡山18:08着 18:13発 JR快速マリンライナー53号・高松行
坂出18:51着 19:00発 JR予讃線・琴平行
宇多津19:04着
乗車距離:788km
所要時間:13時間24分(乗車:11時間48分)
乗換:10回
(泊)快活クラブ丸亀店

お読みいただきありがとうございました

64歳「青春18きっぷ」地獄の高知行き【後編】に続きますこちら
明日こそ地獄、かもしれません。乞うご期待

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