瀬戸内海を歩いて渡る〜しまなみ海道65kmの憂鬱〜再挑戦編

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奥多摩じゃない山など
前回リタイアした生口島にようやく上陸

生口橋を渡って因島に上陸。前回(「瀬戸内海を歩いて渡る 〜しまなみ海道65kmの憂鬱〜」)にリタイアし、豪華路線バスに乗った島です。

因島

因島に上陸します。

ショートカット

因島に向かってぐるぐる下る途中でイチかバチかのショートカット狙いです。ブルーラインをはずれて小さな農道を選択しました。バッチグーでした。

ショートカット

調子こいて別の場所でもう一度ショートカットを試みるもこれはおそらく失敗。登りがキツかったです。

まわり道

調子こいた報いはまだ続きました。工事のため大きなまわり道です。とほほ。

因島はあまり記憶がありません。島が平凡すぎる、なんてことはなく(多分)、かなりもーすでにそーとー足は痛いし疲労困憊で周囲の景色や風や土やにおいに感覚を向ける余裕がなかったんだと思います。んー、いまになってもやはり因島の雰囲気を思い出せません。ちょっと残念です。
北東に向かって島を横断し、海に出ると海岸沿いに北上して因島大橋を渡ります。

因島大島

因島大橋が見えてきました。

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揺れる2階建ての因島大橋をビビりながら渡り、最後の島の向島へ

前回、豪華路線バスで渡った因島大橋を渡ります。いよいよ最後の橋です。2階建てです。上を豪華路線バスなんかの自動車、下をその他が通行します。これまでの橋で揺れを感じたことはなかったんですが、因島大橋は揺れます。かなり怖いです。上階を疾走する自動車の轟音ばかりでなく、ゴギーッチッ、ゴギーッチョッ、みたいな音も絶えず聞こえます。悲鳴でしょうか、笑い声でしょうか、橋の音です。

因島大橋

因島大橋の1階にもぐりこんでいきます。

因島大橋

因島大橋。揺れます。全長1270m、海面からの高さは50m。

眼下にはカロー谷出合あたりの小川谷(ただのたとえです。なるほど!って膝を打つほどのたとえではないので無視していただいてかまいません)くらい速い潮流が幾筋も白く泡立って流れています。

痛む足に鞭打って因島大橋を足早に渡り切ると向島に上陸です。いよいよ最後の島です。尾道駅前に渡る船着き場をめざして島を縦断します。まだまだ先は長いんですが、ぐるーりぐるぐるの降下が容赦なく足と脚を痛めつけます。

向島

向島に上陸します。

因島大橋

渡ってきた因島大橋と因島。

足は足底の指の付け根が水ぶくれになったようなひりつく痛みです。めちゃくちゃ熱い砂浜に裸足で立ったときの痛みに似ています。両足ともです。脚は向こう脛の外側の筋肉(前脛骨筋というらしい)がガッチガチに凝り固まって鋭い鈍痛という矛盾をはらんだそこそこ激しい痛みに襲われていました。脚も両方なんですが、左が重症。ただ、脚はのべつ幕なし痛むわけではなく、大きなうねりがあります。まるでリタイアするための言い訳のような泣き言ですが、正直なところ、もうちょっとでココロがくじけそうになったのは事実です。

今治67km

今治(のどこかはわかりませんが)から67km。ずいぶん歩きました。

向島に降りてきて自転車・歩行者の出入り口から右がブルーラインのひかれた通常ルートですが、左を選択しました。Googleマップで調べると左は西側の海沿いを北上する通常ルートより近道のはず。

分岐

ブルーラインのひかれた右ではなく、左へ。

ブルーラインのない「裏道」は両側を山に挟まれた林道みたいな雰囲気です。だんだん日は傾き、気分は下山なんですが登りが続きます。「この近道はまた失敗?」などと心細い限りです。
ようやく登り坂が終わり、しまなみ海道をくぐり、じょじょに下っていきます。街に入ると半ズボンのヨレヨレヨタヨタおっさんは奇異に映るに違いないと思い、道端でジーパンに生着替え。ついでに畑の石垣に腰をおろして足と脚を休めました。

荒れ気味の畑や廃屋や灯りのついた民家がぽつりぽつり見えてきました。街灯はなく、ヘッドランプをザックから取り出すかどうか迷っていたけれど幸い月明かりが道を照らしてくれます。車の量がちょっと増えたな、と思っていると県道317号にぶつかって右へ。しまなみ海道をもう一度くぐって北上していきます。チリチリ痛む足裏と大きなうねりでやってくる脚の痛みにかなりやっつけられています。痛みをだましだまし、すっかり日の暮れた街を歩きます。バス停のベンチを見つけてはザックを降ろし、脚をさすって「い・ろ・は・す」を飲んで渡船のりばをめざします。

渡船のりばをめざしてあと少し

大きなT字路で右折するとブルーラインがひかれていました。通常ルートに合流です。近道作戦は成功だったのか失敗だったのか、判断のしようがありませんが、そんなことは今さらどーでもいいです。もう少しで渡船のりばのはずです。左折して真ん中に水路のある大きな道路へ。大きな割には妙に薄暗いんですがここにもブルーラインがビシッとひかれています。海のにおいがしてきたような気がします。どこからともなくエルガー作曲『威風堂々』が誇らしげに流れてもおかしくない状況ですが、道にそろりそろり足を置き、脚の痛みをかばって猫背で歩くわたくしの頭にはドヴォルザーク作曲『新世界より』第2楽章と『瀬戸の花嫁』(小柳ルミ子)と『シカゴ・バウンド』(憂歌団)の3曲が絡み合うように順不同で流れます。

このあたりに渡船のりばは尾道駅前と土堂という船着き場に行く2か所あるはずです。尾道駅前に行きたいんですが、道を確認する気力がでません。何も考えす目の前のブルーラインに沿ってまっすぐ進みます。
道は合っていたようです。「尾道駅行 渡船のりば」と書かれた古ぼけた看板が薄ぼんやりと浮かんでいるというか沈んでいます。数人の通学、通勤者にならって待合室ではなく、船着き場の先端に向かい、海に面したベンチに座ります。時刻表は「6:00〜22:00」だったと思います。「待ってれば来るよ」タイプのようです。暗い海を眺めながら脚をさすって船を待ちます。

渡船のりば

渡船のりばに着きました。

乗船。船は静かに海を渡って本州へ
渡船のりば

たくさんの通学、通勤者が下船します。

静かに船がやってきました。平たい先頭は口を開けています。接岸するとパタンと鉄板が倒れて船と陸をつなぎ、係員が船内に張られていたトラロープをはずすと人や人と自転車や人とバイクがどーっと降りてきました。今度はわたくしたちの番です。どーっというほどではありませんがそれでも20人ほどと5、6台の自転車とバイクが乗り込みます。奥に進み、トラロープ手前のベンチに陣取りました。最後尾が先頭になります。
なにか合図はあったかな? 静かに出港です。狭い水路をゆっくり航行します。ニコニコ顔のおじさんが運賃を集めにきました。大人1人100円、自転車やバイクがいっしょなら1台につきプラス10円。100硬貨を渡すとおじさんはなにか言っていたようですが、よく聞き取れませんでした。聞き直そうと思っていたらすぐに次の人に歩いていきました。ほとんどの乗客が定期券のようです。
「船長 料金係 募集」っていう張り紙が気になります。尾根歩きの次は海をまたにかける男、ちょっと惹かれます。船は5分ほどで海をまたぎます。尾道の無数の灯りを映した海面を揺らしながら対岸の尾道駅前に到着です。たくさんの人が待っています。接岸して板が倒れておじさんがトラロープをはずして人や自転車やバイクが上陸します。人波に乗り遅れたわたくしは最後に下船。本州に上陸しました。

渡船のりば

尾道駅前に着岸しました。

所要時間16時間14分25秒、移動距離74.0km、最低高度-53m、最高高度106m、累積高度(登り)2266m、累積高度(下り):2247m、平均速度4.6km/h(「ジオグラフィカ」というアプリの記録から抜粋。スタートは愛媛県今治市のネットカフェ「バンビーズ」、ゴールは広島県尾道市のJR尾道駅。「最低高度-53m」はデータのバグだと思います。海底トンネルを歩いた記憶はないし、渡船は潜水しませんでした)。歩く距離は65kmほどだと思っていたんですが、70kmを超えたようです。
これにて瀬戸内海を歩いて渡った記録はおしまいです。

お付き合いいただきありがとうございました。

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