奥多摩尾根歩き
マミ谷右岸尾根、日蔭名栗山南尾根

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今回はマミ谷右岸尾根を登り、日蔭名栗山南尾根(ひかげなぐりやまみなみおね)を下りました。
マミ谷右岸尾根は再挑戦です。前回は氷に覆われた岩にビビって唐松谷で撤退したんですが、今回はそこそこの準備をしてきました。チェーンスパイクにピッケル、10mのトラロープ。以上です。ホントにそこそこです。ハーネスやエイト環なんかを持たずにロープ(しかもトラロープ)がどれだけ役立つのか微妙ですが、まっ、これらのそこそこの準備でダメなら再度の撤退やむなし、の固いんだか固くないんだかよくわからない決意でマミ谷右岸尾根を目指したのでした。
マミ谷右岸尾根はマミ谷と唐松谷の出合からマミ谷の右岸を南にせり上がり、石尾根の高丸山(たかまるやま 1733m)をてっぺんにした尾根です。林道日原線(以降、日原林道)をずーっと奥、石尾根の北面にある尾根で、1500m圏で東隣のツバノ尾根と合流します。このあたりのヤケト尾根オッコシ尾根ツバノ尾根桧尾根、高丸山赤指尾根は歩いたことがあるんですが、マミ谷右岸尾根は手つかずというか足つかずでした。理由は簡単で、怖そうだったから。尾根に取り付くまでの2度の渡渉やら周辺のめっちゃ詰んだ等高線はビビるのにじゅうぶんです。けれども前回、どこを歩こうかと地図をグーーっと眺めているとマミ谷右岸尾根が目についてしまいました。見て見ぬ振りしようかとも思ったんですが、これからずっと見て見ぬ振りするのもかなりしんどいことです。で、行ってみたけどダメでした。今回もダメだったなら、見て見ぬ振りの質も変わろうというものです。「再挑戦したけど無理っだったんだよね」などと高邁なチャレンジ精神にちょっと不甲斐なさをブレンドして苦み走った自嘲の笑みを浮かべればOK。などと思いながら出発したのです。
日蔭名栗山南尾根は石尾根の日蔭名栗山(1725m)からほぼ真南に、モクボ谷とボウズ谷の出合に落ち込んでいる尾根です。1回登ったことがあり、何度か下っています。今回はマミ谷右岸尾根がメインで、日蔭名栗山南尾根は悪いんだけどオマケみたいな感じになってしまいました。

コース JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→日原街道→日原林道→(50分)八丁橋→(1時間10分)唐松谷林道入口→吊橋→唐松谷渡渉→桧尾根乗越→マミ谷渡渉→(1時間)マミ谷右岸取付→(1時間10分)マミ谷右岸尾根→ツバノ尾根合流(1490m圏)→(2時間40分)高丸山(石尾根)→(15分)日蔭名栗山直下→日蔭名栗山南尾根→峰谷林道→(2時間)峰谷バス停→(45分)[GOAL]峰谷橋バス停→JR青梅線奥多摩駅
(9時間50分)
歩いた日 2022年1月23日(日)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→日原街道→日原林道→(50分)八丁橋→(1時間10分)唐松谷林道入口→吊橋→唐松谷渡渉→桧尾根乗越→マミ谷渡渉→(1時間)マミ谷右岸取付→(1時間10分)マミ谷右岸尾根


マミ谷右岸尾根にたどりつくまでは、まずガチガチの氷に覆われた唐松谷をうろうろしてなんとか降りられる場所を探し渡渉、桧尾根を越えて今度はマミ谷。マミ谷は楽に渡渉できたんですが、右岸尾根に乗るまでがもう大変。ピッケルを突き立て岩を探り根っこを掘り探し、谷から1時間ほどかかってようやく尾根に立ちました。

おはようございます。日原林道です。右はビシッと整備された天祖山(てんそさん)への登山道です。奥に見えるゲートを越え、
男性ソロハイカーの立つヤケト尾根への下降点を過ぎ、
ツバノ尾根への下降点を通過し、
鍛冶小屋沢の964m標高点の真上に立つトチの大木を見上げながらてくてく歩き、
バス停から2時間ほどかかって唐松谷への下降点に到着です。
今回はピッケルとチェーンスパイクで氷に立ち向かう所存でございます。KIRIN 午後の紅茶 エスプレッソ ティーラテを一口飲んで出発です。
右に唐松谷、中央に桧尾根、左にマミ谷が見えてきました。
マミ谷(右)と目指す右岸尾根です。
長沢耽美(ながさわだに)と唐松谷の出合に架かる吊橋を渡ります。
右上は富田新道(とみたしんみち 野陣尾根 のじんおね)や唐松谷林道への登山道ですが、そちらではなく、道標の左を通って唐松谷の上流に向かいます。
ゲッ、先週より明らかに氷は厚くなっています。林道の雪や氷はほぼなくなっていて油断していました。先週たどり着けなかった左上の木まで、チェーンスパイクの効きを確認しながら右上の氷に覆われた道を慎重に進みます。
あちらから歩いてきて
木の根元に到着。
先週、確認できなかった木の向こう側です。うーん、無理。ここからは谷に降りられません。ですが、きょうはすんなり撤退するつもりはありません。道標まで引き返し、
唐松谷沿いを登りながら谷を覗き込み、降りられる場所を探します。ここなら急降下ですが、中央やや右の倒木あたりの水際に降りられそうな氣がします。
下ってきて
下ります。
もう少しで水際です。枯れ葉に隠された氷にガクブルしながらチェーンスパイクを効かせ、ピッケルのピックやらスパイクをガッチンガッチン突きながら時には尻に氷をぺたりとつけながら、じんわりじんわりと水際に降りていきます。あー、脚の長さは吉川晃司、脚力は中野浩一、腕力は朝青龍、反射神経はイチローでなくて残念至極。
なんとか目指した倒木にたどり着きました。
あの上から下ってきて唐松谷を渡りました。
前回と先ほども谷に降りようとして断念したのは、上のやや右の黒い木の左側です。
もう、帰ってもいいかな、くらいの達成感とほどよい疲労感が全身を包みます。けれどもせっかくです。マミ谷を目指します。桧尾根を乗り越すために唐松谷沿いを少し下ります。対岸に吊橋や対岸の道標が見えます。
桧尾根を登ります。
長沢谷の上流方向。
桧尾根の左側、マミ谷です。あの滝の上流からマミ谷を渡るしかなさそうです。
桧尾根を少し登ると桧尾小屋跡です。
小屋跡の左にマミ谷に降りられる踏み跡がありました。
マミ谷右岸を下流方向から上流方向へ(1)。
マミ谷右岸を下流方向から上流方向へ(2)。
マミ谷右岸を下流方向から上流方向へ(3)。
マミ谷右岸を下流方向から上流方向へ(4)。
あちらからマミ谷を渡ってきました。唐松谷に比べればラクちんで雲泥の差です。スキップするように(イメージ)右岸尾根の横っ腹の下端に取付きました。
マミ谷右岸を上流方向へ斜上し、テキトーなところから左へ登って右岸尾根に乗ることにしました。
右岸尾根の横っ腹を登ってきて
登ります。とんでもない急登です。登るというか這います。
ちょっと休憩。山肌にへばりついて握力の復活を待ちながら、危機感に疲れたココロを休ませながら、落ちたらどれだけのダメージを受けるのな、などと思います。
両足のチェーンスパイクに右手のピッケル、左手のルーツファインディング(登攀を支持する木の根を探ること)で這い上がってきましたが、どうしても動きがとれなくなって1mほどズリズリズリと下ってルートを変更したり、これはかなりヤバい状況じゃないの? などと思ったり、なんとかなるよね、ね、ね、などと自分を鼓舞したり、
ようやくもう少しで右岸尾根に乗ります。
マミ谷右岸尾根に乗りました。マミ谷の水際に立ってからここまで1時間以上かかりました。1050mあたりです。これは尾根の下方。
腕を伸ばして這い上がってきた方向を撮影。ノルアドレナリンやドーパミンといった脳内物質はほぼ完全に枯渇したんじゃないでしょうか。もう十分です。帰れるものなら帰りたいんですが、ここを下るなんて正気の沙汰ではありません。
ピッケルをザックの横に付け、ザックから引っ張り出した杖を伸ばします。午後の紅茶を飲んでマミ谷右岸尾根を登ります。すぐに左から登ってきた小尾根と合流します。
根っこを掘らずにすむだけでも楽ちんです。
かなりの勾配を登ってきて
シロナガスクジラみたいな倒木を通過します。
今度は右から登ってきた小尾根と合流します。
左に見えるのはツバノ尾根。ずーっと上の方で合流します。
右から登ってきた小尾根と合流し、その先で左から登ってきた尾根と合流します。グニャグニャした地形です。このグニャグニャは地形図から読み取るのは難しいと思います。
グニャグニャウネウネした地形が続きますが(なぜかここから写真入日付が入っています。ゴム引き手袋に軍手を重ねてカメラを操作するといきなりフラッシュが光ったり、いろんなことが起こります)、
シュッとした場所もあります。
登ってきて
登ります。
雪が増えてきました。ちょっと休憩。
振り返ると真後ろに天祖山に突き上げる二軒小屋セド尾根赤石尾根大ブナ尾根が見えました。
ガバリンガバリンと表面が凍った雪を踏んでいきます。小気味いいんですがけっこう体力を消耗します。
ヒーコラと登ってきて
空が広く見えてきました。高丸山はもう近いんでしょうか。
そんなことはなく、広い空を背負った小ピークを越え、
登ってくると
1490mあたりに標石が埋まっていました。ちょうどツバノ尾根との合流点あたりです。
合流点を越え、右に下っているツバノ尾根やタワ尾根や長沢背稜(ながさわはいりょう)を眺めながら休憩します。