2024年3月8日、2023年度第3回日本漢字能力検定の合否発表がありました。
漢検のサイトから会場番号や受検番号を入力すると「漢字検定合否結果通知」が表示されます。まぁなんというか、その素っ気なさといったらありゃしません。ロゴ画像のひとつあるわけじゃなく、文字のみでたんたんと結果を知らされます。もちろん、アクセスは集中するだろうからできるだけ軽く表示させるための策でしょう。それにしても不合格なら漢検公式キャラクター「いちまる」(自己紹介「オイラ、いちまる。漢字が大好きな宇宙人まる!」)が慈悲深い眼差しでこちらをじっと眺めている画像なんかがあってもいいと思うんですよ。わたくしとしては。
まっ、そんなことはともかく、皆様の温かいご支援(それほどはなかったような記憶ですが)、ありがとうございました。5回目の挑戦でようやく合格できました。不合格と同様、おそろしく素っ気ない通知画面を確認しました。けれども次の受検なんかへの勧誘があったりして、そのヘンはしっかりしています。得点などの詳細がわかるのはまだ先です。8割(160点以上)以上の得点で合格なんですが、おそらく9割、180点近くの得点だと大口を叩かせていただきます。だって合格したんだから。
そこで約束していた(?)漢検準1級の合格のコツのコツをエラそーに書くことにします。万が一、以下のメソッドを実践して、素っ気ない不合格通知を受け取っても『奥多摩トラバース』はなんの責務を負いません。『奥多摩尾根歩き』のレポート同様、自己判断、自己責任で歩いてください。なんて言うのは上から目線っぽくて好きじゃありません。好きじゃないけれど確認のために書いておきます。
敵を知る
受検問題を敵視する必要はないんですが、そのほうが話が盛り上がりそうなので倒すべき敵としておきます。
まず敵の陣容ですが、以下のようになっています。もう何年もの間、変更されていないようです。今後もこのままの態勢で攻めてくると思われます。敵ながら泰然自若、大したものです。
漢検準1級のレベルは「大学・一般程度(約3000字)」とされていて「常用漢字を含めて、約3000字の漢字(JIS第一水準を目安とする)の音・訓を理解し、文章の中で適切に使える」かが審査されます。
具体的な出題は「漢字の読み」「漢字の書取」「故事・諺」「対義語・類義語」「同音・同訓異字」「誤字訂正」「四字熟語」の7部門。「熟字訓、当て字を理解していること」「国字を理解していること(峠、凧、畠 など)」「典拠のある四字熟語、故事成語・諺を正しく理解している」かどうかなんかがその内容です(この段落の「」内は日本漢字能力検定協会のホームページより引用)。
隔靴掻痒、これではまったく敵を知ることはできません。いちばんいいのは「こんな問題です」って全問を掲載することなんでしょうが、協会の著作権を侵害できませんので協会がホームページで公開している過去問題のURLを紹介しておきます。1回分しか公開されていませんが、試しに解いてみると敵の全貌がなんとなく浮かび上がると思います。
また、協会は過去問題集を定期的に出版しています。過去問題の著作権にうるさいのもうなづけます。1冊に6回分の過去問題が掲載されていて1430円(税込)。2022年以前は1級の過去問題と抱合せで1冊だったのが2023年から『漢検 準1級 過去問題集』というタイトルで分冊になっています。抱合せは割高だと思って購入しなかったんですが、いまはどうでしょう。1回分が238円なら購入アリかもしれません。分冊になったのを知らなかったので購入はしていませんが。過去問題に関しては後の「武器」でそこそこ詳述します。
敵の懐にもう少し入ります。設問は以下の通り、大問が10問です。
(一)次の傍線部分の読みをひらがなで記せ。1〜20は音読み、21〜30は訓読みである。(配点=1×30)
(二)次の傍線部分は常用漢字である。その表外の読みをひらがなで記せ。(1×10)
(三)次の熟語の読み(音読み)と、その語義にふさわしい訓読みを(送りがなに注意して)ひらがなで記せ。(1×10)
(四)次の各組の二文の( )には共通する漢字が入る。その読みを後の□から選び、常用漢字(一字)で記せ。(2×5)
(五)次の傍線部分のカタカナを漢字で記せ。(2×20)
(六)次の各文にまちがって使われている同じ音訓の漢字が一字ある。上に誤字を、下に正しい漢字を記せ。(2×5)
(七)次の「問一」と「問二」の四字熟語について答えよ。
「問一」次の四字熟語の(1〜10)に入る適切な語を後の□から選び漢字二字で記せ。(2×10)
「問二」次の1〜5の解説・意味にあてはまる四字熟語を後の□から選び、その傍線部分だけの読みをひらがなで記せ。(2×5)
(八)次の1〜5の対義語、6〜10の類義語を後の□の中から選び、漢字で記せ。(2×10)
(九)次の故事・成語・諺のカタカナの部分を漢字で記せ。(2×10)
(十)文章中の傍線(1〜5)のカタカナを漢字に直し、破線(ア〜コ)の漢字の読みをひらがなで記せ。(2×5 1×10)
解答はひらがなで書くか漢字で書くかの2通りです。(一)〜(三)、(七)「問2」、(十)(ア〜コ)が漢字をひらがなで書く「読み」問題、他がひらがなを漢字で書く「書き」問題。配点をみると「読み」が70点、「書き」が130点。圧倒的に「書き」の比重が大きくなっています。
ここで四字熟語というジャンルをみてみると設問は(七)のみ。配点は30点で200点満点の15%を占めています。これを大きいと考えるか小さいと考えるか微妙なところですが、170点のシェアをもつ二字熟語や1字の漢字は広大なひとつの山域に入っているといえます。
どーゆーことかというと、ある1字の音訓読みを知ることはたやすいし、その文字が使われた熟語も芋づる式にたどることが可能です(以降、主にネットでの検索を念頭においています)。Aという字からABという熟語へ、そしてBの音訓読み、Bを含む熟語へと、まるで笹尾根から派生する無数の支尾根のように歩いても歩いても次から次へと未踏の尾根が現れるようなものです。んっ、なんか違うな。とにかく、四字熟語は二字熟語や1字の漢字の山域とはまったく別の山域です。四字熟語は四字熟語としてのアプローチをするべきだと思います。アプローチ方法については後述します。
弱点を突く
戦いに勝つには敵の弱点を突くのは有効な方法です。山登りや沢登りなんかでも「弱点」という言葉が使われています。険しい山容や渓相を前にしてできるだけ取付きやすく危険を避けられるルートを見つけることを「弱点」を探すと言うようです。けれども『奥多摩尾根歩き』では一度も使ったことがありません。「弱点」という言葉はあまり好きではありません。だって、山や沢が強かったり弱かったりするわけがありません。ついでに書くと、「○○尾根を使って下山した」とかいう「使う」の使い方も好きではありません。なんだか、エラそーな感じがしてダメです。
話がずれまくりました。では、漢検の弱点はどこか。わかりません。あるのでしょうか。あれば思いっきり突きたいんですが。
ただ突くまでもない、ほっとけばいいポイントはあります。設問の(十)です。(十)を攻略しようとして何かをするというのは時間の無駄だと思います。
出題されてきた小説や評論の傾向を探ってどーのこーのしようとしたところで対象となる作品の数たるや人が読書に費やせる時間を考えれば無尽蔵です。無尽蔵に対抗する術はありません。
(十)で出題されたカタカナを、文脈と知っている漢字を擦り合わせでマッチするものを引っ張り出すという作業は(九)に近いものがあります。(十)の対策は問題集なんかで解いて設問の構造を知っておくだけで十分だと思います。というわけで思いっきり強いて言えば(十)が弱点、なのかなあ。
武器の選定と使用方法
敵のおおよその全貌が判明したところで次は武器の選定とその使用方法です。無手で立ち向かうには相手はそこそこ強大だと思います。
わたくしがこれまで5回の戦いのなかで手にした武器は大別すると、書籍とWebサイトの2種類あります。
書籍は『カバー率測定問題集 漢検マスター準1級 改定第2版』(ナツメ社 2015 価格不明)、『本試験型漢字検定試験問題集準1級’17年版』『同’22年版』(成美堂出版社 880円税込)、『漢字検定準1級学習ノート』(高橋書店 2005?奥付に不記載 価格不明)、『漢字検定二略準1級上略』(漢字検定模擬試験問題研究会 2016 1650円税込)を手にしたんですが、実際に真面目に取り組んだのは『カバー率測定問題種 漢検マスター準1級 改定第2版』と『本試験型漢字検定試験問題集準1級’22年版』の2冊です。
あくまでも個人的な感想ですが、『漢検マスター』と『本試験型’22年版』(以降『本試験型』)を完全に覚えればほぼ確実に合格できると思います。ただ、この「完全」の難易度はタワ尾根の大京ノ峰からモノレールをまたいで岩稜を巻くまでを目隠しで歩くくらい、と思えばわかりやすいはず、かな?
以下、武器の紹介です。
■『漢検マスター』
まずは『漢検マスター』(アマゾンのページへ)。アマゾンを調べてみると『漢検マスター』は『カバー率測定問題集 漢検マスター準1級』から『史上最強の漢検マスター準1級問題集』(1430円税込)にタイトルが変わっていました。発刊は2021年。惹句には「好評の問題集の改訂第3版。過去24年間の出題を分析 好評をいただいていた『カバー率測定問題集 漢検マスター準1級』を最新の内容に改訂し、改題した第3版です。過去24年間の出題を徹底的に分析し、出る順で構成しています」に続き、「本書全体で85%超をカバーしており、準1級の合格点をこれ一冊でカバーすることができます」とあります。
同書のいう「カバー率」は「その本で試験の単語や問題をどのくらいカバー(的中・得点)できるかという割合のことで、単語集や問題集の信頼性を表す指標の1つ」。手持ちの旧版のカバー率は80%をうたっているんですが新版は85%超にパワーアップしています。
『漢検マスター』を初めて手にしたときは300ページ以上ある本なので文字通り歯が立たないんですが、文字通りじゃなくても歯が立ちませんでした。読めない、書けない漢字だらけで愕然、呆然としたことを覚えています。やさしいはずの「50%カバー Aランク」でも読み書きできるのは3割程度でした。めちゃくちゃ焦りました。「こんなの無理、合格なんてできるわけない」と思ったのはあながち間違いではなく、4回も不合格になってしまったことはこれまで書いてきた通り。とほほ。
まっ、それは置いておいて、合格に必要な得点率が80%であることを考えると『漢検マスター』1冊を完全に習得すれば合格してお釣りがくる計算です。確かに、5回目の受検で大真面目に『漢検マスター』に取り組んだ結果、「んっ、いけるんじゃなかろうか」というこれまでにない感覚になりました。
■『本試験型』
『本試験型』(アマゾンのページへ)は本試験と同じ設問様式の模擬試験が18回分収録されている問題集です。200ページ以上あり、やはり歯が云々。こちらも新版の『’24年版』(1100円税込)が発行されています。模擬試験は試金石としての使い方をするのがフツーでしょう。問題集を進めていて飽きたら模擬試験を解く、ということを続けました。
■Webサイト
以上は書籍の武器ですが、Webサイトにも強力な武器があります。
Webサイト上の問題集はスマホから見られるので携帯に便利なのがバッチグーです。荷物にならないので山行の電車内でも漢字を覚えられます。
Webサイトの携帯性より強力な利点は「検索」です。ある1字の漢字から広大な山域を探索するには「検索」が山歩きの地図とコンパス、GPSくらいに有益というか必須と断言してもいいと思います。
そもそもデジタルの有用性は高い検索性にあります。たとえば「尾」という漢字を知りたいときに紙媒体ではどーするのか? 小中高大までは漢和辞典で調べていたっけ? 古い話なんで忘れましたが多分そうです。けれどもいまはGoogle(他の検索サイトでもいいんですが)の検索窓に「尾 漢字」と入力すれば瞬時に大量の情報を得ることができます。音訓読みや表外の読み、常用漢字、教育漢字、部首、意味、四字熟語をふくむ熟語なんかがわかります。スマホやパソコンの使用環境によって異なるとは思いますが、検索ワードに「漢字」を含めるのがミソです。「尾」ではなく「尾 漢字」で検索することで検索結果のおそらくトップに『漢字ペディア』の「漢字一字」のサイトが表示されると思います。
『漢字ペディア』は漢検の本家本元、公益財団法人 日本漢字能力検定協会が運営する漢字・日本語検索サイトです。『漢字ペディア』には上記の情報のほかに検索した漢字が漢検の何級に該当している漢字なのかが明示されています。たとえば「尾」は4級ですが、準1級の漢字であれば同じページに掲載されている四字熟語に目を通しておけば四字熟語の山域にも足跡を残せます。ありがいことに四字熟語にも『漢字ペディア』内にリンクが張られていてクリック(タップ)するとその意味や関連する「故事・成語・諺」なんかも掲載されていてそれにもリンクが張られていて、、、と、漢字をずるずると習得するにはかなり強力な武器です。ちなみに「尾」のページには「尾を塗中に曳く」とか「尾大なれば掉わず」という「故事・成語・諺」が掲載されています。そして「曳く」の「曳」を「曳 漢字」で検索すると準1級に割り当てられた漢字であることがわかり、「揺曳」とか「曳航」という準1級におなじみの熟語まで捕捉できます。
ネット上には問題集もたくさん公開されています。以下によく山行の電車内で閲覧していたサイトを挙げてみます。すべて無料で利用できます。
『漢字検定準1級 無料練習問題』
「読み」「書き取り」「四字熟語」「対義語 類義語」「同音 同訓異字」「故事・諺」のジャンルで全部で2300問以上。意味も掲載されるのが便利。
『只管!漢検読み問題(準1級)』
読み問題のみ。間違えた問題が3問後に再出され、利用者全体や自分自身の正答率が表示される。問題数550問。簡単な意味も表示される。
『漢字検定WEB問題集』
熟語の「読み」、「四字熟語」の読み、「送りがな」のある漢字の読み、の3ジャンル。「読み」と「四字熟語」はそれぞれ250問、「送りがな」は300問。意味の掲載はなし。
『【漢検準1級】コンプリート四字熟語』
YouTubeで公開されている四字熟語に特化した動画。『漢検四字熟語辞典』(日本漢字能力検定協会 2012 3080円税込)に掲載されている準1級相当の四字熟語が「あ行編」「か行編」「さ行編」「た・な行編」「は行編」「ま〜わ行編」の6つの動画で紹介されています。その数は愛及屋烏から和光同塵までの656個。4つのマスと読みと簡単な意味が表示され、意味の補足やヒント的なナレーションもあり、数秒後に四字熟語がふんわりと現れます。「紙もあればいいな」と思っていたんですが、この原稿を書くためにnoteを見ていたらエクセルファイルやPDFファイルがダウンロードできるようになっていました。知りませんでした。これなら検索もできるし、印刷して(しなくても)覚えた四字熟語に印をつける、なんてこともできます。
以上、武器として2冊の書籍と5つのWebサイトを紹介しました。もちろん、このほかにもたくさんの有益なサイトがあると思うんですが、注意したいのは、プロの編集者やプロの校正(校閲)者が目を通して商業出版された書籍にも誤植はあります。ましてや個人運営のWebサイトに間違いがあるかもしれないことは頭の隅に置いておいたほうがいいです。「ん?」と疑問が出たら『漢字ペディア』で確認すればバッチグーだと思います。
コンテンツ(漢字の問題)の携帯性や検索性でデジタル(Webサイト)のほうがアナログ(書籍)より優位でしょう。ただ、紙のページをめくっていてたまたま見かけた漢字が記憶に残る、なんていう「ゆらぎ」というか「あそび」で得られる美禄はアナログならではです。このことは、アナログ時代からデジタル全盛の時代まで、主に紙媒体で糊口をしのいできた身としてはなかなか捨てがたい魅力ではないか、と書いておきます。
■過去問題
強力な武器の1ジャンルとして過去問題(以下、過去問)があります。敵の過去の戦法そのままが記録されたものですから、現状の自分がどれくらいの力量なのかを知るうえでとても有用な武器となります。
前述した通り、協会から出版されている過去問題集は1級と準1級が抱合せだったのが2023年発行分から分冊になり、『漢検 準1級 過去問題集』としてリニューアルされました。2023年板は2021、2022年度の計6回分が掲載されています。ちなみに協会のサイトで公開されている1回分の過去問は2022年度第3回の検定です。書籍とダブっています。渋ちんです。
できるだけお金をかけずに過去問を手に入れたいと思うのは人情です。わたくしも首まで人情に浸かり、過去問を探しました。
古本をオークションサイトで探して安価に購入するのはまあ順当な方策ですが、わたくしはネットで公開されている過去問を探しまくりました。検索はフツーに考えると「漢検 準1級 過去問題」という語句でいいと思いますが、これでは過去にリアムタイムでブログなどで公開された問題は検索に引っかかりづらいです。「漢検 準1級 問題」とするのがベター。さらにGoogleなら検索を「すべて」ではなく「画像」にするのがコツです。「すべて」だと文字列から過去問を選び出さないといけませんが、「画像」なら一目瞭然です。問題集の表紙画像なんかは無視し、検定問題そのものを探せばいいだけです。
さらに奥の手があります。「漢検 準1級 問題 pdf」として「すべて」で検索するとどーでしょう、あーら不思議、協会サイトの表からは見ることのできない過去問のPDFファイルへのリンクが検索結果に表示されます。おそらく、これまで公開してきた過去問の残滓なのでしょう。たとえばわたくしのパソコン環境では検索結果のひとつに協会サイトの「問題 【1まいめ】」という文字列が表示されます。リンク先は「https://www.kanken.or.jp/kanken/outline/degree/example/outline_degree_example_j1m_h27.pdf」。クリックすると平成27年度(2015年度)の第1回の問題が表示されます。このURLはkanken.or.jpというビル内のkankenというフロアにあるoutlineという区画のdegreeという机のexampleという抽斗に入っているoutline_degree_example_j1m_h27.pdfというファイルを指しています。「j1m」は準1級問題という意味でしょう。では「m」を「k」にかえれば解答ファイルが表示されるはずで、表示されます。「h27」はもちろん平成27年度のことです。では数字をかえると、、、西暦にしてみると、、、夢はふくらみます。いずれファイルは抽斗から片付けられるかもしませんが、まっ、それはそれで渋ちん?
違法にアップロードされている著作物(過去問)であることを知っていて、ブログなどからダウンロードすることは著作権法に違反するおそれがあります。民事で協会から損害賠償請求される可能性はゼロではありません。ただ、損害賠償請求が未来の受検者の数にどう影響するかは微妙だと思います。というか、減ることはあっても増えることはないでしょう。『過去問題集』の丸ごとアップロードやダウンロードなどの悪質なものでない限り、協会としてはほっとくのが得策だと思うんですがどうでしょう。著作権法では「軽微なもの」は例外で違反ではないとされています。たとえば1回分のアップロード・ダウンロードを「甚大」と訴えれば渋ちんと揶揄される気がしないでもありません。
なお、刑事罰は反復・継続してダウンロードした場合は2年以下の懲役あるいは200万円以下の罰金、または両方、なので1度きりなら刑事罰の対象にならないはず。以上、素人が調べた著作権法なのでそのあたりご容赦ください。
なんだか妙な尾根筋に入り込んでしまった気がしないでもないんですが、これで強力な武器のひとつである過去問題の探し方を終わります。
文部科学省後援と漢検協会事件と履歴書
協会はちょっと控えめに漢検が2024年度から文部省後援になることを告知しています。文部科学省後援になったのはこれが初めてではなく、実は「復帰」です。1992年から当時の文部省の認定資格になっていた(2006年度から認定制度の廃止に伴い後援)んですが2009年に取り消されてしまいました。15年ぶりの復帰です。
2009年、協会の設立者である理事長とその子の副理事長が協会の会計を私的に流用したことが発覚し、世間を騒がす大きなニュースになりました。この事件を機に文部科学省は後援を打ち切ったのでした。検定ブーム、漢字ブームの真っ只中でのことでした。理事長や副理事長はたっぷり儲けた協会のお金を目当てに自分たちが代表を務める企業に実態のあるようなないような業務委託をし、ネコババして2人は背任罪で2009年に起訴され、2014年に懲役2年6月の実刑判決が最高裁で確定しました。NHKの『クローズアップ現代』で「裏切られた“漢字検定”」として放映されたりもしています。ちなみに文部科学省後援は資金援助なんかがあるわけではなく、申請をして認められれば「文部科学省後援」という文言を使って行事なんかをしてもいいよ、文部科学大臣賞をあげちゃってもいいよ、ということみたいです。
事件の発覚後、元理事長は「謝りたくない」から会見はしないと語ったり、元副理事長は好きなプロ野球チームのユニホームに漢検のロゴを入れる計画を表明したり、なかなかの飛びっぷりが新聞報道されています。
2008年度の受検志願者数は289万3071人で漢検史上最高の人数を叩き出していたんですが、2009年度は212万3191人に。27%の減少はやはり事件の影響でしょう。2019年度から2020年度にかけても26%と大きく減少しているんですが、こちらは新型コロナウイルスの感染拡大が原因。漢検協会事件が新型コロナウイルスと同等のインパクトを与えたと考えると、世間はそーとーかなり厳しい目を向けたと考えていいでしょう。
起訴前から監督官庁である文部科学省が10年近くにわたり10件以上の指導を行っていたことも判明。なかでも『奥多摩トラバース』が気になったのは「検定料の値下げ」。儲け過ぎだから検定料を下げろとの指導に協会は2007年に1級と準1級の検定料をそれぞれ1000円と500円値下げしたそう。現在は準1級の検定料は5500円(1級は6000円)。少々お高いのでは、と思ってしまう金額です。まっ、それはともかく2007年の値下げですが、対象になったのは全受検志願者数のたったの1.05%(2007年度は全受検志願者数が271万6711人で1級、準1級の志願者数は計2万8779人 『奥多摩トラバース』調べ)。渋ちんです。劇渋です。
文部省後援を勝ち取った漢検ですが、大学入試の加点や大学での単位認定、企業の新卒採用などで活用されているようです。「履歴書に書けるのは2級から」なんていう誰が決めたかわからないルールがネットで散見されたりもします。けれども『奥多摩トラバース』が人事担当者だったとして漢検準1級の取得者を評価するかといったら微妙です。知っていることより、調べて間違わない努力や手間をかけられる人ほうが企業にとって欲しい人材だと思うんですがどうなんでしょう。
なんだか漢検不要論みたいな論調になってしまいましたが、そんなことはありません。趣味として漢検は優れた対象だと思います。誰に迷惑をかけるわけでなし、ちょっとした初期投資(問題集など)でランニングコストはほぼゼロ、あとはタイミングをみて少々お高いけれど検定料を払うだけ。合格しても繰り返し受検する人がいるのもうなずけます。
この項目はいらなかったかな。まっ、いいです。
合格証書と得点
3月23日、協会からこれまでになく大きな封筒が届きました。そうです。合格証書です。そしてA4サイズの合格証書に同封されていた得点結果はというと、163点。でっかい打ち上げ花火がドッカーンとはいかず、線香花火がヒュンというめでたさでした。はははは、、、。とほほ。
以上、得点の割にはずいぶんエラそーな記事を読んでいただき、ありがとうございました。