高級食材「岩茸」を採って食べてみた

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紀州熊野岩茸取 ごはん
『北斎漫画』(葛飾北斎 )
岩茸(イワタケ)を採って食べてみました。
岩茸は茸の名前だけれども茸ではなく、地衣類らしい。地衣類はというと茸と同じく菌類のなかまですが、藻類と持ちつ持たれるの共同生活をおくっていて、菌が水なんかを藻に与えるお返しに藻は光合成で得た炭水化物を菌に受け渡して二世帯住宅なのか完全同居住宅なのかそんな共同体をつくっています。付け刃の学習ですが、それほど間違っていない説明だと思います。

ブナと地衣類

ブナの幹についた地衣類。地衣類といえばブナ、ブナといえば地衣類、そんなブナですが、ブナは雨水を集めるのに都合のいい樹形をしていてブナから洗い出された栄養分を含んで幹を伝う樹幹流は、地衣類の生育を助けているらしい。(写真:photoAC)

命がけの採取

ネット情報を漁ってみると、岩茸は古来から入手するのがなかなかたいへんで高級な食材、生薬として扱われてきたようです。
入手の困難さは二代広重が描いた『諸国名所百景 紀州熊野岩茸取』を見れば一目瞭然です。ハングオーバーした岩崖に荒縄1本で吊り下げられた籠に乗った山師が岩肌にへばりついた岩茸を剥がし取っています。これを命がけと言わずしてなんと言いましょう。
『北斎漫画』(葛飾北斎 )

『諸国名所百景 紀州熊野岩茸取』(広重 魚栄 万延1  国立国会図書館デジタルコレクション)。ピーンと張りつめた荒縄の先で深い峡谷にぶら下がる2人。自力で昇降できると思えません。何人かでチームを組んでいるんでしょうか。岩茸入れの籠が人の乗った籠より上に結びつけられているのは、万が一、人用籠の結び目が切れても岩茸は入手できる、そんなシステム思想だとすればデンジャラス感はとんでもなく跳ね上がります。

『北斎漫画』(葛飾北斎)

『北斎漫画』(葛飾北斎 十三編 19c 東京国立博物館研究アーカイブス)の「岩茸取」。姉さんかぶりの2人が切り立った岩崖に取付いています。岩の出っ張りに腰掛けた右の女性は籠なしのフリークライミングです。

値段もそれなりに高価です。乾物は1グラムあたり50数円で販売されています。100グラム5000円超です。松阪牛でもそこそこのランクでなければこんな値段にはなりません。残念ながら買ったことはありません。ネット情報です。

そんな岩茸を某所の岩壁で採取しました。命がけではなかったんですが、デンジャラス感てんこ盛りの岩崖を這い上がっている最中のテラスでたまたまなんとなくなんの考えもなく「あーこれ、岩茸だよね」と思いながら剥ぎ取って、ザックの左サイドポケットに押し込んだのでした。

岩茸の生息現場

岩茸の生息現場(採取現場ではありません)。これまでも何回か見かけたことがあるんですが、持ち帰ったのは初めてです。名前の通り、岩に生えていました。標高は800mほどだったかな。岩崖を這い上がっている途中の休憩時にベリベリと剥がしてザックのサイドポケットに入れました。
岩茸は光合成で育つため、日光が適度にあたり、水分を補給できる環境が必要です。さらに、風通しの良い場所が好みのようです。確かに記憶にある岩茸を見た尾根はコツ谷左岸尾根小怒田ノ尾根クロモ山南尾根クロモ山南東尾根なんかのキビシい岩壁を抱えた尾根で日光、霧、風通し、がそろっていそうです。生育速度は1年に1mm程度という話もあり、事実だとすれば珊瑚の何10分の1です。食べちゃっていいんでしょうか。食べますが。

珍妙な姿形

岩茸とキクラゲ

左が岩茸。朽ち果てた革靴の残骸みたいですが高級食材です。これで約7グラム。末端価格は400円超になります。右はそっくりさんのキクラゲ。同量で末端価格は10数円。
比較してもしようがない気がしないでもないんですが、キクラゲはインスタントラーメン用に常備しているのでなんとなく登場させてみました。

岩茸の表と裏

岩茸は灰褐色の部分(右)が表です。裏は黒く、小さな突起で岩にくっついています。霧の流れた後や雨の後なんかはわかりませんが、晴天つづきで乾燥していると慎重に剥がさないとパリンと割れてしまいます。業者ではないので割れても問題ないんですが気分の問題です。

 

「先人はなんでこんなものを食べてみようと思ったのか」と理解に苦しむ食べ物は多々ありますが、岩茸も間違いなくそのグループに入ると思います。

いよいよ実食です。

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