2024年 秋 カラカサタケを食す

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カラカサタケ ごはん

幼菌はツクシを拡大した姿形。成菌は唐傘

10月某日。某が所有する山林にて某尾根に生えていたカラカサタケ(暫定。以下「暫定」は省略)を採取しました。大型のキノコです。
第一印象は「こんなの食べられるの?」なんですが、山中での拾い食いが大好きな『奥多摩トラバース』としては食指がのびまくりです。見た目はツクシの拡大版。ツクシを4、5倍に拡大した姿形です。「ツクシが食べられるならこのでかいツクシも食べられるんじゃないか」、という思考経路は至極当然だと思われます。
幸いなことにスマホに4Gの電波が届いています。Googleの画像検索をかけてみたところ、カラカサタケがヒット。うん、どー見てもこのでかいツクシはカラカサタケの幼菌です。ちょっと離れた場所には成菌も生えていました。成菌は名前の通り唐傘をバンって開いた形です。もちろん、過信は禁物。とりあえず目に付くカラカサタケを7、8本引き抜き、レジ袋に入れました。大きなキノコです。袋に収まりきらずに軸がポキリと折れてしまいます。

カラカサタケの幼菌

カラカサタケの幼菌。カラカサタケは夏から秋にかけて針葉樹林や雑木林、竹藪、草地など、ようするにいろんなところに単独で生えたり群生したりするらしい。『奥多摩トラバース』が見つけたカラカサタケはスギの植林帯の中で群生ではないけれど半径2mほどの範囲に5、6本がまばらに生えて(散生)いました。

カラカサタケの成菌

カラカサタケの成菌。カラカサタケは高さ30cm以上、傘の直径20cm以上にもなる大型のキノコです。

カラカサタケはその独特な風貌のほか、傘を握って離すと元の形に戻るという特徴があってニギリタケという名前も持っています。そこでポコリとした球状の傘をおっかなびっくりぐーっと握ってみました。手を開きます。まるで低反発枕みたいでした。ゆっくりぐにゅーっと復元。傘が開いた成菌も同じで傘の上から包むように握っても傘はちゃんと開きました。ほとんど(というか知る限りのすべて)のキノコは傘を握ると割れたり砕けたりするけれどカラカサタケはへっちゃらです。カラカサタケにとってどういうメリットがあるのか判然としませんが、握られてもぐにゅーって戻ることに確固たる自負を持って傘を張って、いや、胸を張っているのかもしれません。

カラカサタケ

上の図は1901(明治34)年に刊行された『日本菌類図譜 3 有毒菌類目譜』(伊藤知二 編 梯六蔵 刊)[国立国会図書館デジタルコレクション]に掲載されたニギリタケとカラカサタケ。当時は傘が丸い幼菌をニギリタケ、傘が開いた成菌をカラカサタケと呼び分けていたことがわかります。そんなことより「有毒菌類」に分類されていたんですね。ほんとーに食べて大丈夫なんでしょうか。

収穫したカラカサタケ

収穫したカラカサタケ。収穫した翌日です。常温でレジ袋に入れておいたらツクシの頭みたいだった傘がキノコらしく開いていました。

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料理します。食します

ネット情報をざっと見渡すとカラカサタケの味は毀誉褒貶が激しく、味についてほぼ触れていないものを含めると毀と貶が優勢のようです。期待薄です。
生で食べると下痢なんかの消化器系の中毒を起こすので火を通すことが必須のようです。このことについてはすべてのネット情報で言及されています。味はともかくポンポンいたいいたいになるのは嫌なのでしっかり火を入れることを意識して料理し、食べることにしました。

■バター炒め

バター炒め

バター炒め。見た目ちょっと微妙ですが、これでも料理です。鉄板にナイフとフォークで食すれば美味かどうかは別にして高級珍味の部類だと思います。かな?

バターで炒めて塩コショウ少々で味付けしました。傘は分厚い湯葉みたいなねっとりとした食感。バターとの相性はバッチグーで、今回の食べ方のうちでいちばんおいしかったです。

■味噌汁

味噌汁

手前味噌でつくった味噌汁。具はカラカサタケだけです。味噌を入れすぎました。

まずカラカサタケに火を通し、出汁を出すために弱火でじっくり煮ました。薄茶色になった湯の味をみたんですが「こんな味」と言うのは困難。けれども「キノコの味」としか言いようがない旨味があるのは確か。ほんだしを加え、手前味噌を溶いて喫食しました。傘は湯葉、柄はシメジ、汁は野趣味あるキノコ汁でした。

■天ぷら

カラカサタケの天ぷら

天ぷら。総天然色グラビアみたいな色合になってしまいました。

まずそうな写真ですがそれほどでもなく、さっぱりとしたキノコ味です。うーむ、まっ、そんな味です。食感はとろっとした傘とシャキッとした柄の対比が面白いです。

■カラカサタケ入り卵焼き

カラカサタケ入り卵焼き

カラカサタケ入り卵焼き。ふつーにおいしいです。

カラカサタケにちゃんと火を通すために、まず小さく切った1本分の傘を炒め、ネギ、白だしを2個の卵に混ぜて焼きました。かなりおいしかったです。カラカサタケとネギの相性はいいのかもしれません。お酒がすすみます。まずくてもそれなりにすすみますが。

よく似た毒キノコ。オオシロカラカサタケ

カラカサタケに似た毒キノコにオオシロカラカサタケというキノコがあるらしい。

オオシロカラカサタケ

オオシロカラカサタケの幼菌(左)と成菌。[写真はphotoAC]

写真を見ると確かにカラカサタケそっくりの風貌で大きなキノコです。ただ色は名前の通りカラカサタケに比べても比べなくても白っぽく見えます。生える場所は山中というよりは庭や公園、道端、堤防などの草地がメイン。身近な場所が多いためか各地の自治体が食べないように注意を呼びかけているキノコです。食べると消化器系の激しい中毒症状が起こるらしい。
カラカサタケとオオシロカラカサタケの見分け方は色、生育環境、柄に褐色の鱗模様が有る(カラカサタケ)か無い(オオシロカラカサタケ)か、ということになりそう。残念ながらオオシロカラカサタケの傘を握るとどうなるかはわからずじまいでした。
その名もずばりドクカラカサタケという毒キノコもあるようです。コカラカサタケという別名の通りカラカサタケよりは小ぶりなキノコでオオシロカラカサタケと同じくらい白いキノコです。幼菌だとカラカサタケに間違いやすそうです。
とにかくポンポンいたいいたいになりたくなければほんのちょっとでも疑いがあれば食さないのが吉というか大吉だと思います。

カラカサタケは流通しているキノコ類にはない野趣味と傘や軸の食感を楽めるそこそこおいしいキノコだと思います。ただ、あえて探しにいくほどではないかな。けれども、尾根歩きの途中で見かけたら迷わず採取します。

※ちょっとキノコのガイドブックを調べてみました。山に携行するなら『ポケット図鑑 新訂 日本のキノコ275』(文庫本サイズ)[別画面でアマゾンにジャンプします]が使いやすそう。傘の裏の姿形でキノコを同定する「きのこ直感インデックス」がある『しっかり見わけ観察を楽しむ きのこ図鑑』(ほぼ新書サイズ)[別画面でアマゾンにジャンプします]も捨てがたいです。

さんざん喫食しましたが体の変調はありません。カラカサタケかどうかはともかく、毒キノコではなかったようです。よかったです。

以上、お読みいただきありがとうございます。

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