奥多摩尾根歩き
モクボ谷・シオキ谷左岸尾根、モクボ谷・三郎谷左岸尾根

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今回はモクボ谷・シオキ谷左岸尾根を登り、モクボ谷・三郎谷左岸尾根を下りました。
シオキ谷、三郎谷ともに峰谷川の上流、モクボ谷(茂窪谷 茂久保谷)の支流です。シオキ谷左岸尾根石尾根の1690mあたり、三郎谷左岸尾根は千本ツツジ(石尾根)から南に下る赤指尾根の1690m圏あたりをてっぺんにして南東に下ってモクボ谷に落ち込んでいる尾根です。尾根の名前テキトーな名付けです。沢の名前は『奥多摩 登山詳細図(西編)』(吉備人出版)や『奥多摩』(宮内敏雄 昭和刊行会 昭和19)によっています。
峰谷林道の終点からモクボ谷の右岸にある作業道をそこそこ上流まで歩けるらしいことをいくつかの沢登りのネット情報で知りました。さらに動画をふくめていくつかのサイトでシオキ沢のすぐ近くまで作業道をたどれそうなことも判明。ありがとうございます。
これまでモクボ谷の右岸はモクボ谷白仁田谷中間尾根(白仁田谷左岸尾根 2021/11/27)チゴウリ沢左岸尾根(2021/12/04)を歩いたままで放置状態だったことを「そういえば」と思い出し、今回の尾根歩きにあいなりました。
※「標高」は省略しています。
コース JR青梅線奥多摩駅→[START]峰谷バス停→峰谷林道→(55分)峰谷林道終点→(5分)モクボ谷白仁田谷出合→(20分)カマツチ谷出合→(30分)三郎谷→(1時間10分)シオキ谷出合→シオキ谷左岸尾根→(2時間10分)石尾根1690m圏→赤指尾根→(20分)三郎谷左岸尾根下降点→三郎谷左岸尾根→(55分)三郎谷出合→モクボ谷→(35分)峰谷林道→(50分)[GOAL]峰谷バス停→JR青梅線奥多摩駅
(7時間50分)
歩いた日 2025年2月1日(土)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

JR青梅線奥多摩駅→[START]峰谷バス停→峰谷林道→(55分)峰谷林道終点→(5分)モクボ谷白仁田谷出合→(20分)カマツチ谷出合→(30分)三郎谷→(1時間10分)シオキ谷出合→シオキ谷左岸尾根→(2時間10分)石尾根1690m圏


下調べではシオキ谷出合まで行けそうなんですが、あくまでも行け「そう」。出合にビシッと立てるかどうかは現地の状況とわたくしの技量と気分次第です。ダメなら下る予定の三郎谷左岸尾根を登って、まではいいとしてその後どーしょー、などと思いながらの出発でした。
モクボ谷の作業道は荒れてはいますがたどる楽しさがあります。けれどもおっそろしいトラバース(山腹水平移動)もあったりもします。
シオキ谷左岸尾根は全て急登でした。初っ端は岩登り。岩がなくなるとカラッカラに乾いたザレ。「短い尾根だから等高線が詰み詰みでもへっちゃらさ」、などと思っていたんですが大甘の甘太郎でした。踏み出す一歩一歩がことごとく10数センチズルッと滑り落ちます。もともと短い歩幅がこれでは台無し、じゃないか、泣き面に蜂です。
そんなこんなの予想コースタイムの2倍かかった尾根歩きをご笑覧ください。

おはようございます。奥多摩駅です。駅前にあった食堂兼売店が取り壊しになってバス停が玉突き移動しています。東日原方面が駅を出て左の坂の上へ、その他方面は元の東日原方面行きのバス停のここに。工事はしばらくつづきそう。
奥多摩駅前から峰谷行きに乗り、峰谷バス停の青空ベンチで出発の準備です。手ぬぐいを首に巻き、防寒着兼雨合羽やダウンジャケットを着たままにするかここで脱いでしまうか、着ていてもどうせどこかで脱ぐしなあ、けれどもいまはめっちゃ寒いしなあ、などと思惑が交錯し、ココロは千々に乱れます。
結局、服は脱がずに軍手をはめながら出発。峰谷川の上流に向かっててくてく歩きます。吊橋の下り橋を右手に見て通過し、
擁壁の上で踏ん張っている小屋を左手に見ながら歩き、
三澤橋を渡って左の林道峰谷線へ。このあたりの地区名は三沢らしい。左からモクボ谷、右から奥沢、合流して峰谷川、3つの沢で三沢ということでしょうか。左から滝谷、右から酉谷、合流して小川谷、3叉路で三又、みたいな。違うかな。
峰谷林道をモクボ谷に沿ってゆるく登っていきます。モクボ谷は地形図の表記ですが、『奥多摩』(前出)や治山工事の名称なんかは茂久保、沢登り情報では茂窪が多いようです。
道中。
坊主谷(地形図はボウズ谷。モクボ谷は地形図の表記にあわせるというダブルスタンダードです。すみません)に架かる橋を渡り、
日蔭名栗山南尾根の取付への林道を分け、
林道の終点です。ワサビ田が取り囲んでいます。
ザックを降ろして杖を引っ張り出して防寒着兼雨合羽とダウンジャケットを押し込み、「ミニクリームパン(5個入)」1個と「午後の紅茶 ミルクティー」を一口飲んで出発します。
ワサビ田の間を抜けてモクボ谷へ。ワサビ田の金網に沿って上流へ歩くと
すぐにモクボ谷に架かる木橋です。渡って右岸へ。石積で守られた作業道の先にモノレールの白い駅舎が見えます。
木橋の下流で白仁田谷が右岸から流れ込んでいます。ワサビ田が積み重なっています。右手はかつて登った白仁田谷左岸尾根ですが、記憶にございません。(下山時に撮影)
駅舎を過ぎ、1つめの堰堤を越え、
2つめの堰堤を越えると
河原の先に作業道のつづきと3つめの堰堤が見えます。
3つめの堰堤を越えます。奥に4つめの堰堤が見えるんですが、
その手前で作業道はカマツチ谷の右岸を遡っていきます。
カマツチ谷は本流以上に堰堤が連続しています。カマツチは釜土なんでしょうか。それにしても堰堤をつくっているごっつい大きな石の入手や施工はいったいどんなふうだったんでしょうか。想像がつきません。
4つめか5つめ、4つめだったかな、うーん、忘れました。そんないくつめかの堰堤の対岸に石積の作業道が見えました。
作業道は大きなくの字くの字でカマツチ谷左岸の山腹を登っていきます。
路肩を隠す落ち葉に難儀しながら登ってきて
モクボ谷を覗き込んでみたんですがちらりと水面が見えるばかり。ずいぶんモクボ谷から高くはなれてしまいました。大丈夫でしょうか。
小尾根を乗越して
作業道がつづきます。
めちゃくちゃしっかりした作業道になって
三郎谷を渡ります。きっと三郎さんのワサビ田があったんでしょうね。
下ってくる予定の三郎谷左岸尾根を乗越します。おだやかな着地になりそうでちょっと安堵。
確か少し前に左に登っていく道と分岐したんだけれども写真は撮り忘れました。小尾根を回り込みますが、朽ちかけた桟道の横板が骨付きバラ肉の骨のように突き出ています。
肉からはずれそうな骨の先はいやーな光景でした。路肩はなで肩というよりは無し肩ののっぺり道です。愛想笑いでなんとかなる雰囲気ではありません。
写真中央のほんの3mほどがおっそろしいトラバース(山腹水平移動)でした。杖で土を掘って足を掛けて、掘って掛けて掘って掛けて、肝を凍らしました。
楽ちんなくの字くの字の登りになり、
水平道になり、
モクボ谷に向かって下り始めました。
モクボ谷に降りました。
しばらく右岸を遡っていたんですが崩落地が見えてきたので
左岸へ。導水パイプに導かれるように遡行続行。
小屋の残骸を通過します。錆びたトタン板を踏むとベカリンと大きな音がしてちょっと驚きました。
対岸に薄ーい踏み跡があるようなないような。けれどもあそこまで這い上がる価値があるのか不透明。見なかったことにします。
本流とワサビ田跡を区切る石堤の上を歩きます。
右岸からシオキ谷が流れ込むシオキ谷出合です。やっと到着。「そう」が実現しました。正面がシオキ谷左岸尾根です。シオキ谷にも石積の堰堤が見えます。この山域はワサビの一大産地だったんでしょう。1230m圏です。
『奥多摩』(宮内敏雄 昭和刊行会 昭和19 国立国会図書館デジタルコレクション)の176ページには 「その源流は大躑躅ノ峰南面のシオキ谷で、右岸から三郎谷・カマツチ谷といふ小澤を入れて茂久保谷の名を得、降って左右から白仁田澤・楢白澤を併せて坊主谷と落合ふ。」と記載されています。「その」は峰谷川です。シオキって、(お)仕置? 塩木? 謎です。
あちらから岩に乗ったり避けたり、足首を酷使しながら遡ってきて
長ーいアプローチでした。シオキ谷左岸尾根をぐっと見上げます。んっ? すぐ上に岩場が見えます。とにかく取付きます。
ガレた急登を登ってきて出合を見下ろします。振り返って
岩です。
登ります。前回の大岳山北石尾根北稜よりはるかに傾斜はゆるいんですが、浮石だらけだし、つかめる根っこはごく少なくルーツファインディング(登攀を支持する木の根を探ること)にも苦労します。
モクボ谷を覗き込みながらちょっと休憩。
1300m圏で岩はなくなりました。
そこそこの急登はそのままでアセビの小さな森を抜けてきて
尾根は広がり明るくなりました。穏やかに見えますがザレた急登がつづいています。
立ち止まって振り返ってまたちょっと休憩。小河内ダムと奥多摩湖が見えました。右上端は御前山の山頂でしょうか。
左手は下る予定の三郎谷左岸尾根が指呼の距離です。
大きな洞を過ぎます。
右手は左端に石尾根の高丸山、中央やや右に日蔭名栗山が見えます。
日蔭名栗山南尾根がモクボ谷と坊主谷の出合に向かって下っています。
ポコリとした小さなピークで左右から登ってきた尾根と合流。
やや勾配はゆるみ広々としたとらえどころのない尾根になりました。
ザレた急登が復活し、喘ぎながら登ってきた尾根は左右を尾根に挟まれて浅く窪んだ地形になりました。右か左か、どちらの尾根に進むか。じっと眺め、念のためスマホGPSで等高線を調べてみました。よくわかりません。なんとなく左を選択。
しつこいようですがこう見えても急登です。カラッカラに乾いた細かーい土粒に足を滑らしながら登っていきます。
登ってきて
石尾根の稜線が見え、
石尾根南面の登山道に立ちました。雪が残っています。
すぐ上の石尾根の稜線に立ちました。想定した地点よりやや下でしたが、まっ、いいです。これにてシオキ谷左岸尾根はおしまいです。
シオキ谷左岸尾根は予定より2倍近く時間がかかってしまいました。計画通り三郎谷左岸尾根を下るか赤指尾根を下って峰谷バス停に降りるか思案どころです。コースタイムを高速計算(個人の感想です)し、峰谷バス停の最終便に間に合うか高速判断(個人の感想です)します。結果、どちらの尾根を下ってもかかる時間はほぼ同じ。最終便に間に合うかどうかはとっても微妙だと判明。であるならと三郎谷左岸尾根に決定。「午後の紅茶」を一口飲み、チェーンスパイクを履き、まず赤指尾根をめざします。

シオキ谷左岸尾根のダイジェスト動画です。峰谷林道終点からモクボ谷右岸作業道を歩き、モクボ谷を遡ってシオキ谷左岸尾根を登った動画です。