今回はクマタカ沢右岸尾根を登り、赤杭尾根(あかぐなおね)、サス尾根を下りました。
尾根の位置は下の地図を参照してください。
クマタカ沢右岸尾根はテキトーな名付けですが、名詮自性、赤杭尾根のエビ小屋山からクマタカ沢の右岸を下って入川谷とクマタカ沢の出合に切れ落ちている尾根です。
赤杭尾根をどこからどこ、と特定するのはいろいろな説(言い分)があって難しいのですが、大ざっぱにいえば川苔山から南東に下り赤杭山を経て古里駅あたりで多摩川に没しています。
実は前回(「速滝」)、クマタカ沢右岸尾根を登り、赤杭尾根を下る目論見だったんですが速滝にたどり着くだけでいっぱいいっぱいでした。今回は「速滝」の山行を土台にして改めてクマタカ沢右岸尾根に臨みました。取付は速滝のちょっと上流の等高線がゆるめのあたりと定め、もしナイスな場所がなければ「速滝」で立った落ち口の対岸から、という腹づもりでの出発です。
クマタカ沢右岸尾根、赤杭尾根、サス尾根
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■コース | [START]JR青梅線鳩ノ巣駅→(55分)大根ノ山ノ神→(15分)西川林道の末端(先端)→作業道→速滝→(2時間5分)クマタカ沢右岸尾根支尾根取付→クマタカ沢右岸尾根→(2時間20分)エビ小屋山→赤杭尾根→サス尾根→(2時間20分)愛宕神社→コンビニ→(15分)[GOAL]JR青梅線古里駅 (8時間10分) |
■歩いた日 | 2024年9月14日(土) |
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。
■[START]JR青梅線鳩ノ巣駅→(55分)大根ノ山ノ神→(15分)西川林道の末端(先端)→作業道→速滝→(2時間5分)クマタカ沢右岸尾根支尾根取付→クマタカ沢右岸尾根→(2時間20分)エビ小屋山
柳ガマ沢を越え、入川谷を渡渉し、クマタカ沢右岸尾根の支尾根に取付きました。取付いたはいいけれどだんだん崖登りに。なんとか支尾根の稜線にのったけれど見上げると喉が伸びきるほどの急登が待ちかまえていました。
おはようございます。鳩ノ巣駅です。電車が発車した雰囲気を撮ろうとしたんですがちっとも動きません。対向列車を待っているみたいです。しょうがないので停まったままの電車を撮影。改札を出てすぐ右へ。突き当りを右折して踏切を渡り、ほぼ真っすぐ、上へ上へとほんのちょっとキツめの勾配を登っていくと民家の前に出ます。左へ曲がると山道のはじまりです。
ヒガンバナがただ一輪咲いていました。
植林の中をゆるく登っていきます。
ト音記号みたいな針金を通過します。
人の姿は見えませんがチェーンソーがうなって木が倒れる音が聞こえてきます。
大根ノ山ノ神に着きました。
近くのベンチで休憩。9月6日から10日にかけて高知県に帰省していました。「青春18きっぷ」を使って全行程を鈍行(各駅停車)や快速での移動です。1日の移動距離は尾根歩きの数十倍です。けれども消費カロリーはおそらく数分の1。缶ビールやら駅弁やら缶ビールやら缶ビールを飲み食いしながらの移動で東京に帰ってきたときには3.7kgの体重増。疲労困憊で帰宅したのになんだかだまされた気分でした。そんなこんなはまったく関係ないんですが、高知県安芸郡馬路村でつくられている「ゆの酢チャージ」を喫食します。柚子1個分の果汁とはちみつなんかをゼリー状にしたものですが、凍らして持ってきました。酸っぱくほんのり甘く、山行にはバッチグーだと思った次第です。
休憩を終え、西川林道をゆるく下っていきます。
川苔山への登山口を過ぎ、
前回、峰集落跡に降りていった地点を過ぎ、
西川林道の末端というか先端です。
フェンスを抜けて林道の延長工事が進む作業道をたどります。
前回、決死のトラバースに誘い込まれた右に下降する道を無視し、
ずんずん歩き、
なんとなく見覚えのある下降する道を無視し、
小尾根の倒木を越えて回り込んでいきます。
女性ものと思われる小さなサンダルが落ちていました。怪しくて妖しいです。
しっかりした石積が残っています。
堰堤やワサビ田跡のある涸れ沢を渡ります。
小尾根を左へ回り込んでいく道と入川谷へ下っていきそうな道の分岐です。ここではっきり「おかしい」と気づきました。前回はこんなところを歩いてはいません。スマホGPSを引っ張り出して現在位置を確認します。方角としては入川谷へ下っていきそうな道をたどっていけば速滝あたりに行けそうです。「そうな道」「行けそう」、不確定要素が多すぎます。引き返すことにしました。
小尾根の倒木を越え、
なんとなく見覚えがあると思った下降点、ここが速滝に向かう道でした。スマホGPSに残っていた前回のログで確認。とほほ、約25分のタイムロスです。最初からスマホGPSに頼っておけばよかった。
そこそこしっかりした踏み跡をたどります。
前回、蛯岩沢(えびいわさわ)と書いた沢に着きました。石積の堰堤からドジャドシャと水が流れ落ちています。
「蛯岩沢」の表記は『奥多摩 登山詳細図(東編)』(吉備人出版 2016)によるんですが、古い雑誌や書籍を調べてみると「蛯」岩沢ではなく「姥」岩沢の表記が「日曜日の山々 長谷見保藏 朋文堂 1948」「奥多摩 (マウンテン・ガイドブック・シリーズ 第11)小野幸 朋文堂 1955」「奥多摩の山と谷(登山地図帳) 奥多摩山岳会 編 山と渓谷社 1958」「奥多摩 宮内敏雄 昭和刊行会 昭和19(ウバヤ沢)」「山と高原 (225) 朋文堂 1955」「岩壁登攀 碓井徳蔵 朋文堂 1958」「皇国地誌・西多摩郡村誌 (奥多摩町史料集 第1号)奥多摩郷土資料館 編 奥多摩町教育委員会 1984」などでみられます。まだまだたくさんありそうです。調べるのがメンドーになりました。
一方、「蛯岩沢」はどうかというとなんとゼロ。1件も見つかりませんでした。うーむ、これは分が悪いです。そーとー悪いです。これはもう、「蛯岩沢」ではなく、「姥岩沢(うばいわさわ)」を採択せざるを得ない状況です。ということで今回から姥岩沢とします。蛯岩沢のほうがエビ小屋山との対比があって面白かったんですが、まっ、そーそーうまい話はありません。
「蛯岩沢」の表記は『奥多摩 登山詳細図(東編)』(吉備人出版 2016)によるんですが、古い雑誌や書籍を調べてみると「蛯」岩沢ではなく「姥」岩沢の表記が「日曜日の山々 長谷見保藏 朋文堂 1948」「奥多摩 (マウンテン・ガイドブック・シリーズ 第11)小野幸 朋文堂 1955」「奥多摩の山と谷(登山地図帳) 奥多摩山岳会 編 山と渓谷社 1958」「奥多摩 宮内敏雄 昭和刊行会 昭和19(ウバヤ沢)」「山と高原 (225) 朋文堂 1955」「岩壁登攀 碓井徳蔵 朋文堂 1958」「皇国地誌・西多摩郡村誌 (奥多摩町史料集 第1号)奥多摩郷土資料館 編 奥多摩町教育委員会 1984」などでみられます。まだまだたくさんありそうです。調べるのがメンドーになりました。
一方、「蛯岩沢」はどうかというとなんとゼロ。1件も見つかりませんでした。うーむ、これは分が悪いです。そーとー悪いです。これはもう、「蛯岩沢」ではなく、「姥岩沢(うばいわさわ)」を採択せざるを得ない状況です。ということで今回から姥岩沢とします。蛯岩沢のほうがエビ小屋山との対比があって面白かったんですが、まっ、そーそーうまい話はありません。
残り少なくなった伊藤園「健康ミネラル麦茶」のペットボトルに姥岩沢のめちゃくちゃ冷たい水を足しました。麦茶が薄まったんですが姥岩沢の水も薄まったことになります。まっ、どうでもいいか。顔を洗い、手ぬぐいを洗って絞って首にかけるとぷるっと身震いしました。
姥岩沢の上流。
堰堤から姥岩沢の下流。「姥」は南に向いた明るい場所、急峻な地形などの意味があるそうですが姥岩沢はどちらにも当てはまります。
姥岩沢を越えてしっかりした道がつづきます。
いきなりくっと曲がるとそこそこの勾配で大きなくの字くの字の道になり、
直進してやや下っていく道と右にくいっと戻るように登る道の分岐です。登ります。
木間におそらく柳ガマ沢にかかる大きな滝が見えました。
853mの標高点の東、820m圏で小尾根を乗越すと
柳ガマ沢です。この先の道がはっきりしません。
上流をじーっと眺めたんですが道は見つかりません。記憶を頼りに前回歩いた道筋をたどることにします。
柳ガマ沢を越え、グズグズの斜面を歩いてきて
のっぺりした踏み跡をたどります。
今回のルートでいちばん展望が開けた場所です。小尾根の先っぽが崩落していて入川谷の下流方向が見えます。小尾根の山側には「東京都水道局 水源林事務所 昭和41年度春植 氷川分区5林班ほ小班」と書かれた白い標識が立っていました。
クマタカ。子尾根の突端からクマタカ沢(の近く)の上空を飛翔するクマタカが見えた、らよかったのに。先に進みます。
チョックストーンのある尾根の割れ目に立ち寄りました。速滝の落ち口まで下った地点です。もう少し上流の等高線がゆるい場所からクマタカ沢右岸尾根に取付くつもりですが、いいポイントがなければここまで戻り、速滝の落ち口の対岸に取付く予定です。
先に進みます。ここから未知の領域です。
速滝の上流に小さな滝がいくつも見えます。
名前のわからない沢を渡り、
入川谷(キワダクボと名前をかえているかも)にゆるやかに下っていきます。ここにも上流に向かってワサビ田跡が何枚もあります。
正面はめざすクマタカ沢右岸尾根の支尾根です。なんとなく取付けそうな無理なような。
入川谷を渡り、
支尾根を観察します。
少し上流に移動するとなんとか取付けそうな場所が見つかりました。初っ端はザレザレの急登ですが写真の左下隅から右上隅に向かって登っていきます。その前に休憩。ザックを下ろし、薄い麦茶というか薄い姥岩沢の水を飲みながら沢辺をぶらぶらします。
ザレザレの急登を斜めに突破し、登ってきました。
浮き石だらけです。名前のわからない草木の根元をつかみ、ルーツファインディング(登攀を支持する木の根を探ること)しながら這い上がります。
這い上がります。
這い上がってきて
這い上がり、
なんとか支尾根に立ちました。
右手の木間にクマタカ沢右岸尾根の本尾根が見えます。ただトラバース(山腹水平移動)で移るには傾斜がキツすぎるし途中の谷地形も不気味です。
本尾根に合流するまで支尾根を登ることにしました。いい雰囲気のヤセ尾根ではじまったんですが、
と、とんでもない急登が立ちふさがりました。稜線上は雷おこしを砕いて振りかけたみたいに岩がゴツゴツしています。
ぐわしぐわしと登ります。
登ってきて
登っていくと
標高880m圏(以降「標高」は省略)で右から左へゆるやかに登っていくしっかりした作業道を横断します。「3|2」の林班界標が立っていました。
急登はやみません。
登ってきて(すでにクマタカ沢右岸尾根の本尾根を登っているはずです)
970m圏でようやく勾配はゆるみました。
980m圏でどこからか登ってきた道が右からやってきて
尾根上をのびていきます。いきなり楽ちんな道になりました。
カシノナガキクイムシ(カシナガ)のフラス(木くずや糞が混じったもの)が木の根元に積もっています。カシナガは木の中に直径2mmほどのトンネルを掘り進み、ミズナラなんかを枯死させるナラ菌をばらまきながらフラスを排出するらしい。トンネル内で卵から羽化したカシナガは成虫になってナラ菌とともに新しい木に飛んでいき、あちらこちらにフラスを積もらせます。カシナガも子孫を残すのに必死でしょうが、山から木が減るのは勘弁してほしいです。
1020m圏で道は尾根から左に下がりました。
尾根上の林班界標、釘の刺さった木柱、標石を通過し、
道は尾根上に戻る気はなさそうです。テキトーな場所で右の尾根に這い上がります。
尾根に復帰。
左半分が崩落した尾根を通過します。
落ちてはいけません。
意味ありげな平坦地を通過し、
右手の木立のすぐ向こうにエビ小屋山南西尾根が見えました。
山頂直下の急登です。空が三角形に切り抜かれています。右の稜線はエビ小屋山南西尾根、左は赤杭尾根。
登ってきて
ぐーっと登り詰めると
エビ小屋山の山頂、1147mの標高点に到着。これにてクマタカ沢右岸尾根はおしまいです。
クマタカ沢右岸尾根のダイジェスト。