奥多摩尾根歩き
エビ小屋山南西尾根、エビ小屋山尾根

(1/2 エビ小屋山南西尾根)


今回はエビ小屋山南西尾根を登り、エビ小屋山尾根を下りました。
どちらも赤杭尾根(あかぐなおね)のエビ小屋山(布滝沢ノ頭 クマタカ山)がてっぺんです。エビ小屋山南西尾根は布滝沢とクマタカ沢という沢の間を南西に下り、入川谷(地形図は峰入川谷。これに関しては後述)に没している尾根です。エビ小屋山尾根は南にダーッと下って入川谷と大蔵谷という谷の出合に下っている尾根です。
エビ小屋山南西尾根へのアプローチは入川谷を遡ります。前日の台風で水量が増えていることは予想できましたが、普段の水量を知らないので「すごく多いの?」「多いの?」「フツーなの?」なんともビミョーな心持ちでぶ厚く流れの速い水を眺め、断続的に難儀な高巻きを強いられました。入川谷沿いの遡行から布滝沢の布滝を眺め、布滝沢対岸の踏み跡をたどってなんとかエビ小屋山南西尾根の下端に架かる木橋に到着しました。尾根本体に関しては本文をお読みください。
エビ小屋山尾根を歩くのは3度めです。すべて下っています。前半は急降下があったり、おだやかになったり、ヤセたりの飽きない尾根なんですが、後半の採石場なのか伐採地跡なのかに出ると足元の見えない原っぱの踏み跡を探りながら下ったり、植林帯の境目をたどったり、濃い藪を突っ切ったり、最後は植林帯の急降下がえんえんとつづきます。えんえんと。これはこれで飽きない、といえば飽きない、のかなあ。
名前はどちらもテキトーです。エビ小屋山南西尾根クマタカ沢左岸尾根とも布滝沢右岸尾根ともクマタカ沢布滝沢中間尾根とも呼べる位置にあります。エビ小屋山尾根は『奥多摩尾根歩き』の初出(「曲り尾根エビ小屋山尾根」2015.6.15)でエビ小屋山尾根としたのでそのままにします。ネット上でエビ小屋山南尾根とかエビ小屋山南南東尾根という表記を見たこともあります。
コース [START]JR青梅線古里駅→古里附橋→(40分)林道入川線→林道終点→入川谷→(2時間)布滝沢出合→布滝→布滝沢出合→入川谷右岸作業道→(30分)木橋→エビ小屋山南西尾根→(2時間40分)エビ小屋山→エビ小屋山尾根→(2時間)鉱山事務所前→(45分)[GOAL]JR青梅線古里駅
(8時間35分)
歩いた日 2024年8月17日(土)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

[START]JR青梅線古里駅→古里附橋→(40分)林道入川線→林道終点→入川谷→(2時間)布滝沢出合→布滝→布滝沢出合→入川谷右岸作業道→(30分)木橋→エビ小屋山南西尾根→(2時間40分)エビ小屋山


エビ小屋山南西尾根はしっかりした道が稜線に絡みながらくの字くの字で登っていました。尾根をあさっての方向に巻きはじめた道から尾根上に這い上がると今度は崖を這い上がることに。かなりの急登がつづき、ちょっぴりデンジャラスなヤセ尾根があったり、岩稜があったり、エビ小屋山の山頂直下は地形図の等高線にだまされた感ありのかなりキツい急登でした。

おはようございます。古里駅です。手ぬぐいを首に巻き、軍手をズボンのポケットに入れ、縮めた杖を持って駅を出て、
青梅街道を右へ。かかし軍団の歓迎を受け、
古里附橋(こりつけばし)の上です。古里は垢離で、かつてはこのあたりの滝で水垢離をして御岳山に登ったらしい。
古里附橋を渡ってすぐ右へ。青梅線のガードをくぐり、てくてく歩き、木の間から赤杭山(赤久奈山)がちらりと見えて
入川谷に架かる橋を渡ると右は昭和石材工業所古里鉱山、左に曲がると林道入川線のゲートです。ゲートを越えます。路面を覆った水が小刻みに波打って流れています。
入川谷の堰堤の補修や川床を頑丈にする工事が行われているようです。
気になるのは看板の「峰入川」(谷)の文字です。冒頭でも書きましたが地形図(『奥多摩 登山詳細図(東編)』も)の表記は峰入川谷なんですが、ネットでは峰入川はごくごく少数派。圧倒的に入川谷の表記が多く、入川谷が定着しているといっていいと思います。青梅線のガードにも「東京都奥多摩さかなセンター(入川)」「(株)昭和石材工業所 入川工場」の看板があります。
戦前戦後あたりの古い地図もことごとく入川谷と表記されています。看板の「峰入川」は工事発注者の東京都西多摩建設事務所が国土交通省にならったんでしょうね。地形図はどこかのタイミングで入川谷右岸の峰集落の「峰」の文字が入っちゃったんでしょうか。
林道の終点広場の手前です。ショベルカーのショベルや油圧パイプ、太いブガブガした樹脂パイプなんかを足がかり手がかりにして入川谷を渡ります。
終点広場の奥、樹林との境目に道がつくられています。
終点広場の奥から入川谷の下流方向。
道を登ってきました。この先、鉄杭とトラロープで誘導してもらえます。
右岸沿いに道がつづきます。そういえばエビ小屋山南西尾根直下の木橋までずーっと右岸を歩きました。
堰堤を越えます。
堰堤を水が美しく流れていますが
この堰堤を越えるのはちょっと難儀。上か下か、2筋の踏み跡を睨み、まっ、どっちでも似たようなものと判断。
下の踏み跡をトラバース(山腹水平移動)。
ザレザレのグズグズでかなりやっかいなトラバースでした。
やっと堰堤に乗りました。4つめか5つめ、これが最後の堰堤でした。工事道具がビシッとそろえられていました。トラロープはここまで。
堰堤の先は広大な河原です。あちらからテキトーに歩いてきて
樹林帯に入りました。堰堤の名残でしょうか、謎の石積を通過します。
入川谷の流れがぐんと近づいて水際を歩きます。
この先の水際は無理。
高巻きます。
そこそこ高く登ってきて
踏み跡をたどって水際に戻って
また高巻いて
謎の石積の遺構を通過して
倒木の下を平べったくなってくぐってきて
水際を歩きます。
入川谷に渡されたワイヤーにピンクテープが何本も垂れていました。水量の計測だと思います。が、「何かな?」と思って近寄る人間はどれくらいいるのか、を調べていたりして。
ザーザーっと流れる水を眺めながら遡ります。
対岸に布滝沢の布滝が見えました。すぐそばです。もっと近くで見たかったんですが水がぶ厚く速く流れているので入川谷を渡るのは断念しました。
振り向くとそこそこしっかりした踏み跡がのびています。めざすエビ小屋山南西尾根の下端にかかる木橋につながっているはずです。
戻るように下流側に登ってきて、途中で道はあやふやになったもののなんとかたどってくると
トラバースが出現。じーーっと眺めます。どー見てもデンジャラスです。ぐーっと登っていくのはいいとしてその後にがっくんと下っている逆V字型ののっぺり道です。腰が引けます引けすぎて腰が落ちそうです。
ちょっと引き返し、この急斜面を登って頭上にあるはずの作業道をめざします。
めちゃくちゃキツい傾斜を登ってきて
登って
作業道にぶつかりました。北東に突き出た細長い尾根の根元あたり、標高620m圏(以降「標高」は省略)です。
右へ進み、北東に突き出た尾根の根元まできました。尾根を回り込んでいく道と下っていく道に分岐しています。下ります。
突き出た尾根からすぐに左へ。
どんどん下ります。
木橋が見えてきました。
木橋を渡ると正面がエビ小屋山南西尾根です。ザックを降ろし、休憩します。流れで顔を洗い、手ぬぐいをじゃぶじゃぶして絞って顔を拭いて首筋を冷やしてまたじゃぶじゃぶして絞って、食欲はないのでペットボトルに詰めてきたほうじ茶をごくごく飲んでぶらぶらしました。
長ーいアプローチからやっとのことで尾根歩きです。しっかりした道が稜線に絡みながらくの字くの字で登っていきます。なんとなく拍子抜けです。もっとキビシい尾根歩きかと思っていました。
こんな場所もうまい具合に道がついています。
調子ぶっこいて道をたどっていたんですがどんどん尾根上からはなれていきます。
あわててテキトーな場所から尾根上をめざして這い上がります。
尾根に復帰しました。尾根の下方です。
振り返るといきなりのヤセアセビ尾根です。左にも右にも落ちないようにアセビを抜けると
ぐーんと急登です。
これぞ急登みたいな急登がつづきます。
崖登りもあったりして
木の幹をつかみながら登ってきて
また崖登りもあります。720m圏です。
登ってきて
750m圏のピークで左から登ってきた尾根と合流。東京都水道局の柱石が設置されていました。
ピークからちょっと下ってぐぉーんという感じで登っていきます。
植林に囲まれた急登がつづきます。
右手上方が明るくなりました。
尾根に絡む道と巻いていく道に分岐します。尾根絡みを選択。
すぐに小屋の残骸がぺたりと尾根に貼り付いていました。明るい場所はどうやら畑跡のようです。890m圏です。
畑跡だとは思うんですがとんでもない傾斜地です。なにを植えていたんでしょう。苗木かな。
樹林に入ります。
振り向いて。
また振り向いてフツーの尾根を歩いて
940m圏でどこにいくか判然としない巻道(?)が尾根をはなれていきます。尾根一筋です。
アセビを抜けると岩稜でした。這い上がります。
さらに這い上がります。
右手が切れ落ちたヤセ尾根になり、
しばらく平坦なヤセ尾根がつづいたんですが
傾斜がキツくなってきて
キツいです。
登ってきて
登ります。
歯を食いしばるなんてできません。
半開きの口で荒い息を吸って吐いて、いや、吐いて吸ってかな。まぁとにかく急登にあえぎながら登ってくると
空が広がり
エビ小屋山の山頂に到着。これにて長ーいアプローチを経て取付いたエビ小屋山南西尾根はおしまいです。
日差しはあるんですが遠雷が聞こえます。下山は真名井北稜を歩く予定でしたがザックを降ろしてちょっと思案。エビ小屋山尾根を下ることにしました。エスケープルート程度に考えていたんですが、なかなかのなかなかなシンドいエビ小屋山尾根でした。

エビ小屋山南西尾根のダイジェストです。