奥多摩尾根歩き
サス谷尾根、クマザワ尾根

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今回はサス谷尾根を登り、クマザワ尾根を下りました。どちらも丹波山村(たばやまむら)の鹿倉山(ししくらやま)あたりにてっぺんがあります。
サス谷尾根のてっぺんは鹿倉山のちょっと北にある1250m圏のピークで、サス谷という谷の左岸をほぼ北に丹波川に下っています。クマザワ尾根は鹿倉山の稜線が西端の鞠子橋(まりこはし マリコ橋)に向かう手前で北に方向を変え、丹波川沿いの甲武キャンプ場にのびています。どちらもテキトーな名付けですが、サス谷は『奥多摩 登山詳細図(西編)』(吉備人出版 以降『詳細図』)、クマザワは『奥多摩 それを繞る山と渓と』(田島勝太郎 著 山と渓谷社 昭和10年)の地図によります。クマザワの位置は微妙ですが、マリコ川の東に顕著な谷はここくらいしかないのでおそらく合っていると思います。
奥多摩駅に着き、青梅街道の落石(保之瀬集落の手前)で丹波行きのバスは鴨沢西までしか行かないことを知って愕然としました。鴨沢西バス停から保之瀬集落まで歩くと約1時間。そもそも落石現場の向こうに行けるかどうかわかりません。迷いましたが代替案もないし浮かばないし、とにかく保之瀬集落に向かってみることにしました。
コース JR青梅線奥多摩駅→[START]鴨沢西バス停→(50分)落石現場→(10分)保之瀬集落→(55分)サス谷尾根の横っ腹取付→サス谷尾根→(2時間20分)1250m圏ピーク→大丹波峠への分岐→(40分)クマザワ尾根下降点→クマザワ尾根→(45分)丹波川とマリコ川の出合→岡部商店→(2時間30分)[GOAL]留浦バス停→JR青梅線奥多摩駅
(8時間10分)
歩いた日 2022年6月18日(土)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

JR青梅線奥多摩駅→[START]鴨沢西バス停→(50分)落石現場→(10分)保之瀬集落→(55分)サス谷尾根の横っ腹取付→サス谷尾根→(2時間20分)1250m圏ピーク


サス谷尾根は前回に歩いたジゴク谷尾根の東隣の尾根です。保之瀬集落から取付までのアプローチは丹波川沿いの続くようだけれども続かないようでやっぱり続く頼りなくてそこそこ険しい道をたどります。怖いような面白いような道中でした。いよいよ道は怪しくなったのでテキトーな大岩からジゴク谷尾根の支尾根に取付きました。岩場を越した中盤以降は急登が続き、てっぺん直下でようやくおだやかな尾根歩きになって、てくてく歩きで標高1250m圏(以降「標高」は省略)のピークに着きました。

おはようございます。奥多摩駅はハイカーで大賑わいでした。鴨沢西バス停でも大勢のハイカーが降りましたが、靴紐を結んでいるといつの間にかサーッといなくなりました。落石現場を越えられるかどうか、不安を抱えて保之瀬集落を目指します。
先行する3人組は林道後山線へ続く道へ。
「初心忘るべからず 分水嶺」の碑を通過します。言っていることはわかりますがなんだか不思議な碑です。
親川(おやかわ)バス停の先で規制テープが張られていました。
そういう場所のようです。けれども落石よりは落フンが目立ちました。車が通らないので獣たちが道路を自由気ままに歩き回っているのでしょう。路面からそれなりのにおいが立ち昇ってきます。
次の規制です。
保之瀬第一洞門をくぐった先の
あそこが落石現場のようです。ショベルカーが腕を振り、ヘルメットをかぶった作業員がテキパキと音が聞こえるほど動き回っているのが見えます。なんだかスキがありません。作業風景にしばらく見入ってしまいました。が、このままでは埒が明きません。意を決して近づき、通してもらえるか尋ねました。
山側の一車線にでっかい土のうを積んで落石を防ぐ工事をしているようです。ショベルカーを停止し、快く通していただきました。
マメトチ窪尾根。保之瀬集落の東端あたりから丹波川の上流に少し目を移すと、
カマクラ谷尾根。もう少し上流に目を移すと、
ジゴク谷尾根。もう少し上流に目を移すと、
手前はジゴク谷尾根でその奥ががサス谷尾根です。
保之瀬集落が見えてきました。「一瞬ためらうほどの急な坂道を下り、橋をわたると保之瀬集落です。ここは谷あいの土地を利用して家や畑がつくられており、急峻に開けた要塞のような集落です。」(ホームページ『たばやま観光Navi』より)。
下保ノ瀬橋を渡り、右の坂道を登ってすぐ左に登る狭い道へ。
マメトチ窪尾根を乗り越し、
カマクラ谷尾根を乗り越し、
カマクラ谷を渡ってジゴク谷尾根を乗り越してすぐ、
このバッキバキに壊れた桟道は渡れません。
あそこまで登って岩の割れ目をまたいで高巻くか、うーん、無理。
少し戻ってジゴク谷尾根を登ります。
細くて黒い樹脂ロープが高巻くルートを誘導するようにずーっと続いていました。
高巻きました。バッキバキの桟道はハング(垂直以上の壁)状の岩の下で見えません。
谷の路肩はあやふやで
谷じゃない場所もあやふやでのっぺりだったりしますが、なんとか道はたどれます。
小尾根の向こうに谷が見え、
水の流れる音は聞こえるけれど流れは見えません。上流方向。
下流方向。ここがジゴク谷でしょうか。いかにもジゴク谷といった様相ですが、このあたりは地形はぐにゃぐにゃで正直よくわかりません。
ジゴク谷(?)を越えるとぐっと高度を上げ、
小尾根を越えるとき木立の向こうに落石現場がちらりと見えました。
道は巨岩にまっすぐ向かっています。
朽ち果てた桟道が岩にダランと架かっていました。
桟道の残骸には長い釘がニョキニョキ突き出ています。中央の木の向こうの割れ目から岩によじ登ることにします。
岩に乗りました。
岩を乗り越したその先はいきなりそーとーデンジャラスな雰囲気です。落ちたら一巻も二巻も終わりです。
乗ったこの岩から尾根に取付くことにします。予定よりはちょっと手前ですが、本尾根の横っ腹からの尾根歩き開始です。
這うように登ってくると
さらに大きな岩というか岩盤がドーンと立っていました。左の茂みをよじ登ります。
登ってきて
あのてっぺんを目指します。
ルートファインディング(進路探索)ならぬルーツファインディング(根っこ探索)で登ってきました。
突き出た岩からの眺め。丹波川に沿った保之瀬集落が見えました。
巨岩に沿って登ります。
手を置いてぐっと体を持ち上げた岩でとぐろを巻いていたヘビ。多分ヤマカガシです。シャーとかシューとかいう威嚇音は聞こえませんでしたが赤黒い舌をチョロチョロさせていました。大急ぎでドダドダとその場を離れ、
逃げ登ってきて
しっかりした作業道にぶつかりました。710mあたりです。
道は右に下り
左に登っています。
そのまま尾根を登ってもあの稜線に合流しそうなので左の道を少したどり、テキトーな場所からテキトーに
くの字くの字で登ってきて
740m圏で尾根に乗りました。この尾根がサス谷尾根の本尾根だと思います。
750mあたりでまた作業道を横断し、急登が始まりました。
ヒーコラと登ってきて
800m圏で急勾配は一息つきました。けれどもこういう新鮮そうな枝が落ちているのは危険なサインです。三頭山中尾根(みとうさんなかおね)でクマに遭ったときも青々とした葉をつけた枝が尾根上に点々と落ちていました。幸い今回は本体に遭わなかったんですが、フンは何箇所かで見かけました。
心地よい新緑ドームの先に急登が見えています。
キツい急登です。残念ながら新緑を愛でる余裕はすぐになくなりました。
1050mあたり。尾根はややヤセて勾配も緩やかになりました。
ややヤセてまあまあの勾配の尾根がずっと続き、
さらにずっと続いたんですが、
1200m圏でこんなになだらかな尾根になりました。
等高線がピローンとのびて空白が広がっている1250m圏だと思います。アセビに突入したり逃げ出したりしながら進むと
林道が見えてきました。
林道を左にちょっと進み、あのポコリとしたピークを目指します。
1250m圏のピークに到着。これにてサス谷尾根はおしまいです。赤い境界見出標が木にくくりつけられていました。
ザックを降ろし、ペットボトルに詰めてきたほうじ茶を飲みます。夕食の残りのトンカツでカツサンドをつくってきたんですが食欲はありません。そんなことよりこれからどうするか、悩みどころです。予定通りクマザワ尾根を下るとすれば来たときよりも長い青梅街道歩きは必至です。うーん、やはり鹿倉山、大寺山(おおでらやま)に向かい、陣屋(じんや)バス停か深山(みやま)バス停をゴールにするのが妥当か。などと思い悩んでいたんですが、ザックを背負って杖を握ったわたくしの体はスッとクマザワ尾根に向かったのでした。なんで?