奥多摩尾根歩き
滝子山東稜

(2/2)


1057m標高点(中平)→(25分)鞍吾山→(50分)林道→(2時間10分)[GOAL]JR中央本線初狩駅


1057mの標高点(中平)を過ぎると滝子山東稜はこんなところにも名前がついているんだ、みたいなピークをいくつか越えて鞍吾山(くらごやま)に着きます。鞍吾山の手前で雨が本降りになり遠雷も聞こえてきました。鞍吾山から南下する計画でしたが、地形図を見ると北東すぐに実線(福音3m未満の軽車道)が通っています。この実線をめざして短い尾根を下ることにしました。

1057mの標高点(中平)を過ぎても岩稜になったりしましたが、長くはつづきません。先ほどから雨が本降りに。遠雷も聞こえてきます。
何気なく右手の小さなピークに立ち寄ってみると「中ダイロノ峰1040m」「鞍吾山(西峰) (中平)1044」。と書かれた2枚の山名板が木に架かっていました。
次のピークには「鞍吾山 東峰 (ソモウノ峰)1047」「ソモウノ峰 1046m」の山名板。
なだらかな尾根を進むとすぐに
鞍吾山の四等三角点に着きました。標高は1037.73m、基準点名は恵能野(えのうの)。4個の保護石に囲まれた柱石に傷みは少なく新しい風情です。「点の記」によると1985(昭和60)年の埋設です。そういえば鞍吾山の山名板は見あたりませんでした。
これにて滝子山東稜はおしまいとします。
冒頭にも書いた通り、鞍吾山から南下して殿平(でんだいろ)を経て初狩駅に下山する予定だったんですが雨は降るし遠雷は聞こえるし、とっとと下山するために北東の尾根を下ることにしました。歩きやすそうな尾根です。
1010m圏の分岐。右の尾根を下ります。
かなりの急降下です。
下ってきて
下ります。雑木に囲まれた尾根にはかすかな踏み跡はあるんですがここもヒトのものとは思えません。
二重稜線の向こうの尾根に移ろうとしたら窪みにクマがいました。突然の闖入者にそうとう驚いたみたいです。クマは脱兎のごとく向こうの尾根に駆け上がって落ち葉を蹴散らしながら駆け下りていく音がフェードアウトしていきました。あんなスピードでこちらに向かってこられたらそれはもうなす術はないです。5月に日原のネズミザス沢右岸尾根でクマの親子に会ったばかりです。なんとなく、今年はまだまだクマに会う気がしてなりません。
クマの足音が消えてからもしばらく待ちました。クマが乗越した尾根に移り、下ります。シュッとした尾根です。ヒトが歩いた気配はまるで感じられません。
860m圏の分岐です。どちらでもよさそうですが等高線がよりゆるい左を選択。
水の流れる音がンザーーーと聞こえてきます。恵能野川は近いです。
尾根の左に寄って覗き込むと堰堤から流れ落ちる水や白い流れがちらりちらりと見えました。
いつも間にかヒノキの植林に囲まれてゆるく下っていきます。
770m圏の分岐です。これが最後の分岐です。ここまで下ってくるとどちらでもいいんですが、左へ。
恵能野川が見えてきました。
下ってきて
地形図の実線にぶつかりました。まったくの予想外です。1、2台の軽トラックが走るのを見かけるんじゃないかな、擁壁から道路に降りるのに苦労しないかな、などと思っていたんですがまるで違っていました。たしかに道は道ですがこれはフツーの山道ですよね。まっ、かつては車両も走っていたと思われる道ではあります。
あちらから下ってきました。これにて鞍吾山からの北東尾根はおしまいです。雨はやみ、遠雷はさらに遠くへ行ったようです。
黒いパイプといっしょに林道? をてくてくと下っていきます。
橋を渡ります。
デ、デ、デンジャラス。真ん中を歩くのが吉。大吉。
恵能野川の流れ。
でっかい廃屋(違ったらごめんなさい)を過ぎ、
神社を過ぎ、
舗装道路に出ました。恵能野川の川底は白い砂です。
民家がぽつりぽつりと点在する道をひたすら歩きます。
川向うに巨大なベニテングタケ? と思ったらどうやらひっくり返った椅子のようです。
遊仙橋バス停に着きました。というか予期せぬバス停です。大月駅行きのバスが4分前に出発したみたい。時刻表なんて見なきゃよかった。
初狩駅をめざしてひたすら歩きます。正面のかっこいい山容は、帰宅後に調べると高川山という山らしい。地下をリニア実験線が貫いています。
町からフツーに富士山が見えます。この地域のハイカーは山頂なんかで富士山が見えるとやっぱり「あっ、富士山だ!」なんて思うんでしょうか。
甲州街道に出て初狩駅をめざします。のど自慢が集う(に違いない)「演歌」です。営業日に注意です。
東京から100kmということは東京まで100km。遠いです。
車を入れてきょう歩いた浜立尾根滝子山東稜を撮ろうとしたら車が入りすぎました。
初狩駅に着きました。大月市初狩町出身の山本周五郎の碑が建っています。碑には「著者の郷里甲州の雄大な自然を舞台に謳いあげた、周五郎文学に特異な位置を占める怪奇幻想の大ロマン」(新潮社)だという『山彦乙女』の一文が彫られています。
バスに乗れなかったぶん、なのか、列車はすぐに来ました。真木温泉を過ぎたあたりの商店で買った缶ビールのプルタブを引き上げます。吹き出す泡が無事帰還の祝福ムードを盛り上げます。
滝子山東稜は岩稜がハードで進路がややこしいルートでした。鞍吾山からの尾根も短いわりには分岐にかなり気を使う尾根でした。調子の悪いスマホGPSを頼ったせいもありますが、進路を何度か間違ってしまい、四苦八苦しました。やはり初めての尾根は下らずに登るのが身のためです。
山の神様、地権者の皆様、きょうもありがとうございました。また。よろしくお願いします。